羽田衝突事故、運輸安全委も海保機長聴取 CFRP機初の全損全焼
羽田空港で1月2日に起きた海上保安庁機と日本航空(JAL/JL、9201)機の衝突事故について、運輸安全委員会(JTSB)の武田展雄委員長は2月27日、調査の進捗について、事実関係の把握は進んでいるものの「分析はできていない」と説明した。1月の会見時点では未実施だった海保の機長に対する聴取を実施したことを明らかにした。 【写真】衝突事故で焼け落ちた海保機とJALのA350 武田委員長は「事実情報は段々埋まってきたが分析はできていない。全体像を把握する必要がある」と現状を説明した。一方、具体的な進捗状況については「今の段階でお答えするのは難しい」と述べるにとどめた。 前回1月23日の会見では、海保機(MA722、ボンバルディアDHC-8-Q300、登録記号JA722A)の機長に対する聞き取りはできていなかったが「体調も考慮して長時間にならないよう、何回かに分けてゆっくり実施している」(武田委員長)と説明した。 1月の時点では、事故現場の確認や事故機の飛行記録装置(FDR)とボイスレコーダー(CVR)の回収、JALの札幌(新千歳)発羽田行きJL516便(エアバスA350-900型機、JA13XJ)に乗務していたパイロットと客室乗務員、羽田空港の管制官に対しての聞き取りなどの調査が行われていた。 今回の衝突事故は、A350が初めて全損・全焼した事故で、CFRP(炭素繊維複合材)で胴体が作られた機体としても初の全損全焼事故となった。武田委員長は「衝突後火災に至っているので過程を明らかにし、今後いかに乗客をお守りするかという観点から、全世界的にも要望されていると思っている」と述べ、CFRP製の機体で起きた事故にどういった特徴があり、どのように事故を防いで乗客を守るかに留意し、世界的な注目を集めている今回の調査を進めていくという。 JTSBは事故発生後、6人の調査官を現地に派遣。A350の製造国であるフランスのBEA(フランス航空事故調査局)、設計国の一つであるドイツのBFU(ドイツ連邦航空事故調査局)、A350のロールス・ロイス製エンジン「トレントXWB(Trent XWB)」の製造国である英国のAAIB(英国航空事故調査局)、FDRやCVRなどの製造国である米国のNTSB(米国家運輸安全委員会)、Q300の製造国カナダのTSB(カナダ運輸安全委員会)の5カ国の調査機関、メーカーのエアバス、ロールス・ロイスが事故調査に参加している。BEAやAAIB、NTSB、エアバス、ロールス・ロイスからは調査官や担当者が来日し、JTSBと共に現地調査にあたった。 調査報告書の取りまとめに1年以上かかる場合、経過報告(中間報告)を出すことになっているが、現時点では調査の初期段階であるため、経過報告を行うかは未定。また、JTSBの調査は警察の捜査とは独立して行われており、捜査が調査に影響を及ぼさないよう、警察とJTSBは協定を締結している。
Tadayuki YOSHIKAWA