『おむすび』結が直面する栄養専門学校の厳しさ、出てきた授業は全部本当…スタッフはどんな取材をしたのか
今週放送中の連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)第8週「さよなら糸島 ただいま神戸」では、結(橋本環奈)が神戸の栄養専門学校に通い出し、いよいよ栄養士の夢へのステップを登りはじめた。 【写真】英語の授業を受ける結と沙智 ところが、初日からいきなり包丁研ぎ、多岐にわたる分野の難しい座学、講師による厳しい指導など、さっそく結は「専門分野のプロを志すことの厳しさ」の洗礼を受ける。学校で同じ班になった沙智(山本舞香)、佳純(平祐奈)、森川(小手伸也)はなかなか一筋縄ではいかないメンバーで、一波乱ありそうだ。 震災について、ギャルについて、扱う題材すべてに関して綿密な取材を重ねてきた本作のスタッフ。もちろんドラマのメインテーマである「栄養士」についても愚直なまでの取材をおこなっているという。栄養専門学校での授業の様子を描くために、制作陣はどんな取材を行ったのだろうか。制作統括の宇佐川隆史さんに聞いた。 ■ プロの厳しさをしっかりと伝えなければ、物語を進められない 脚本家の根本ノンジさんや、スタッフたちとともにたくさんの栄養士、栄養専門学校や大学関係者に取材をおこなったという宇佐川さんは、「栄養専門学校のOB・OG、現役学生のほとんどの方が『こんなに勉強すると思わなかった』とおっしゃっていたんです」と語り、こう続ける。 「取材した私自身、想像もしていなかった勉強の質量に驚きました。自己紹介が終わるやいなや、いきなり難しい授業が始まったり、1時間ひたすら包丁研ぎをやる授業も、取材で知ったことを活かしています。ドラマ的に、学ぶ順番は前後させていますが、第38・39回で登場した基礎科学、解剖生理学、英語などの座学、包丁研ぎなどは、すべて実際に栄養士を養成する学校でおこなわれている授業です」と明かす宇佐川さん。 続けて、「取材をしていて、あそこまでしないと人に食の安全や健康の知識を伝えることはできないんだと圧倒されました。『神戸栄養専門学校編』は、プロの栄養士さんたちがどれほどの学びと研鑽を経ているかをわかってほしい、その厳しさをしっかりと伝えないことには物語を進められない、という気持ちで作っています」とコメント。 取材の方法について、「現在栄養士や管理栄養士として活躍されている方々はもちろんのこと、栄養士を養成する学校のありとあらゆる種類の各専門の先生に取材をしました。結と同じように現在栄養士養成学校に通っている現役の学生さんたちにはアンケートを実施させていただき、『栄養士養成学校あるある』みたいなものを教えていただきました」と宇佐川さん。 取材したなかには元ギャルの栄養士さんもいたそうで、「そこで伺ったお話を、結が初日にネイルとメイクを取らされたエピソードなどに活かしました。その方は、清潔に保つことを前提としながらも、卒業まで茶髪だけは貫き通したとおっしゃっていて、それも勉学と折り合いをつけながら『好き』を貫いていく結のこれからに反映しています」と明かした。 ◾️ 森川に託した「人は何歳になっても夢を追っていい」という思い また、当時の「栄養士」の認知度について、「現在の物語の舞台である2007年といえば、結や沙智が目指している『スポーツ栄養士』という言葉もまだあまり認知されていませんでした。翌年の2008年、「北京オリンピックで金メダルを獲得した女子ソフトボールチームに、管理栄養士が帯同していた」というニュースで、その名が知られ始めたということでした。『おむすび』の物語は栄養士の歴史でもあるので、栄養士さんへのリスペクトを忘れずに、その『夜明け前』の様子を描きたいと思っています」と語る。 小手伸也演じる45歳の森川学の存在感が、栄養専門学校でのシーンに絶妙なアクセントと味わいを与えている。森川というキャラクターについて、宇佐川さんは「栄養専門学校を取材していくなかで、様々な境遇、様々な年齢の方が栄養士を目指して学ばれていたことを知りました。小手さんが演じる森川には『神戸栄養専門学校編』で伝えたい『人は何歳になっても夢を追っていい』というテーマを体現してもらっています。それぞれに個性もやりたいことも違う4人が今後、反発もしながら、努力しながら、お互いを高めあっていく姿にご注目ください」とコメントした。 明日放送の第40回では、結たちの班にあるピンチが訪れる。果たして個性がバラバラの4人はどう対処するのだろうか。 取材・文/佐野華英