<旋風・十勝からセンバツへ帯広農>第1部 出場決定までの軌跡/上 北大会の完敗バネに /北海道
◇チームの合言葉「開花」 帯広農は2年ぶりに出場した2019年の秋季全道大会で初めて4強入りした。十勝地区大会の勢いそのままに、初戦の武修館戦で10安打を放ち、8対7の打撃戦を制すと、2回戦の札幌山の手戦は15安打、準々決勝の北海道栄戦も11安打と連続2桁安打を6試合に伸ばした。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 地区大会から全道準決勝までチーム打率4割4厘の強打を武器に、甲子園出場経験のある私立校も降す快進撃だったが、きっかけは夏の完敗だった。 7年ぶりに出場した19年の北北海道大会1回戦、この大会で準優勝するクラーク記念国際に七回コールド負け。わずか1安打しか打てなかった。中軸を任されたが、2三振などに終わった千葉俊輔選手(2年)は「これでは全国には行けない」と、実力差を痛感した。最後の攻撃となった七回に代打に出た水上流暢(はるのぶ)選手(同)は1死三塁で三ゴロ。1点は返したが、「打てなかった」と今も悔しがる。 全国との差を知り、克服するため新チームは打撃強化に活路を見いだす。手始めに練習開始を午前9時から5時に繰り上げ、暑さ対策と共に朝から動ける体作りに取り組んだ。 さらに、夏休みを利用し秋田県へ遠征。18年夏の甲子園で準優勝し、旋風を起こした金足農と練習試合に臨んだ。結果は1分け1敗だったが、同じ公立の農業高校ながら春3回、夏6回の甲子園出場を誇る強豪から自分たちに足りないものを教えられた。エースの井村塁主将(同)は「試合前の声出しから違った。自分たちも相手を圧倒するような雰囲気が必要だ」と痛感。チームでムードを盛り上げる合言葉「開花」を決めた。 地区大会3試合で36点を挙げた打線は全道初戦でいきなり「開花」した。一回表1死満塁で、5番・水上選手が中越えに適時二塁打。3点を先制し、主導権を握った。夏の悔しさを糧に、全道で打率6割、6打点と打線をけん引した水上選手は「一番印象に残っている。チャンスで打てたことが自信になった」と振り返る。 ベンチからは常に「開花」のかけ声が飛んだ。自分たちの可能性を最大限に発揮する言葉が選手たちに力を与えた。夏にまいた種が強打の花を咲かせ、センバツ出場という実をつけた。【高橋由衣】