京大卒&元外銀勤務ポーカープレイヤー岡本詩菜が世界大会優勝!出国前に語った「″上振れ″の人生論」
「ポーカーも、勉強した人が勝つんです」
日本時間の7月2日、米国・ラスベガスで開催される世界最大のポーカーイベントが『WSOP(ワールドシリーズオブポーカー)』の女性限定種目で、日本人プレイヤー・岡本詩菜(しいな)が世界一の座を摑んだ。 【画像】冷静なプレイと美貌で世界中が注目 ポーカープレイヤー岡本詩菜「素顔写真」 手練(てだ)れが集(つど)ったファイナルテーブル(決勝卓)で、冷静なプレイとオリエンタルな美貌を披露した彼女は、瞬(またた)く間に世界中の注目を集めた。本誌はそんな彼女の出国前日にインタビューを敢行し、大会への意気込みやポーカーの魅力について語ってもらっていた。 埼玉県に生まれた岡本は、「一人暮らしがしたい」という単純な理由で、難関・京都大学の工学部建築学科に進学した。卒業後は外資系の投資銀行で働き、そこでポーカーと出合ったという。 「運とスキル、そのどちらも必要なのがポーカーというゲームの魅力だと思います。運に左右はされるんだけど、ゲーム理論について理解すればするだけ勝率は高まっていく。相手の年齢、性別、体格関係なくバッチバチに勝負できる競技ってあまりないし、ここまで大きなお金を稼げるゲームもない。実は昨年、会社を辞めたんです。だから現在の私の肩書は『ポーカー好きのニート』。まだ『プロ』は名乗っていません。でも、ポーカーで生活するようになってからの1年半で、渡航費や大会への参加費を差し引いても約2000万円を稼ぐことができました」 現在、彼女は1年の3分の1ほどを海外で過ごし、トーナメントに出場する日々を送っているという。 鉄仮面のように無表情を保って相手に心中を察せられないようにする「ポーカーフェイス」や、弱い手札しか手元にないのにハッタリで強い手札だと見せかける「ブラフ」など、ポーカーから広まり市民権を得た言葉も少なくない。卓上はいわば相手とのだまし合いだ。ポーカーの経験を積むことで、人間関係や仕事で生きることもあったのではないだろうか。 「プレイ中は無表情を保ちますし、目線には気をつかいます。たとえば、相手のチップに目を配りすぎると、相手からどれだけチップを奪うか考えている=自分の手札が強いことがバレるとか……。人によっては、ウソや緊張によって鼓動が速くなると、それが首元の脈拍に現れたりします。ただ、実生活でハッタリをかませるようになるとか、そういうことはあまりありません(笑)。また、実際は世間で思われているほどポーカーは相手の表情や態度から情報を得て勝負するものではありません。ゲーム理論に基づき、基本的にはチップのやり取りから情報を得て判断をします。(日本では違法ですが)海外では相手の表情を見ず、チップのやり取りだけから情報を得て勝負するオンラインポーカーも盛んです」 自分の手札を確認し、相手の手札を予想しながら出来上がった役によってベット額を決めていくのがポーカーだ。 「勝率が低い勝負に運良く勝ち続けることもあれば、もちろんその逆もある。ポーカーをしていて、確率からかけ離れた″上振れ″や″下振れ″を経験すると、実は人生でも同じようなことが起きてるのかもしれない、と思ったりします。 ポーカーでは勝率が計算で出せますが、人生においては勝率なんてものはわからない。結果が伴わないことに対して、本当はただ単に下振れしているだけかもしれないのに、『自分は無能だ』と考えてしまったり、反対に、本当は上振れしているだけなのに、『自分は有能だ』と考えて慢心してしまっていることがあるかもしれない。ポーカーを通して、人生をそう捉えるようになりました」 人生もポーカー同様、世間が思う以上に運の要素が強い――そんな言葉を残して、彼女は翌日、『WSOP』が開催されている決戦の地・ラスベガスへ旅立った。 彼女が悲願の世界一を達成したのは、インタビューから約2週間が経過した7月2日のことだった。彼女の”上振れ”は、まだまだ終わりそうにない。 『FRIDAY』2024年7月5・12日号より 取材・文:柳川悠二(ノンフィクションライター)
FRIDAYデジタル