2023年の「物価高」倒産 コロナ禍最多の645件 前年比2.2倍増、3月以降は50件超の高止まり
2023年(1-12月) 「物価高」倒産状況
「物価高」を起因とした倒産が急増している。2023年の「物価高」倒産は645件(前年比126.3%増)で、前年(285件)の2.2倍と大幅に増加した。12月は前年同月と同件数の56件だったが、3月から10カ月連続で50件台で高止まりしている。負債総額は4,130億4,700万円(前年比126.5%増)だった。 コロナ禍で停滞していた経済活動が本格化するなか、円安やロシアのウクライナ侵攻などを背景に、原材料や資材、原油などの価格上昇が物価高を招いている。こうした物価高は一般家庭だけでなく、企業収益にも大きな影響を及ぼしている。 産業別は、最多が製造業の139件(前年比162.2%増)。次いで、建設業130件(同170.8%増)、運輸業127件(同67.1%増)の3産業が100件を超えた。物価上昇のスピードに価格転嫁が追い付いていないことも大きな要因になっているようだ。 負債額別では、最多が負債1億円以上5億円未満の273件(同116.6%増)だった。また、10億円以上も41件(前年比36.6%増)発生し、事業規模に関係なく物価高の影響を受けている。ただ、1億円未満も276件(構成比42.7%)を占め、小・零細規模ほど物価高を吸収できていない。 形態別では、破産が568件(同124.5%増)と、約9割(構成比88.0%)を占めた。また、取引停止処分が46件(前年比228.5%増)と急増ぶりが目立つ。業績回復の遅れに物価高がのし掛かり、資金繰りに窮した企業が増えていることを示すのか、今後の動向に目が離せない。 物価高で実質賃金が20カ月連続で前年同月を下回っている。GDPの約55%を占める個人消費の停滞は、企業業績の回復にも影響するだけに、物価高への抜本的な対策が急がれる。 ※本調査は、2023年(1-12月)の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。