管理職が「言ってはいけない」NGワード…管理職が大好物の「決まり文句」に、じつは社員が“ドン引き”しているワケ
2015年、電通に横行していた違法な長時間労働や勤務時間の過少報告が、高橋まつりさんの過労自殺を契機に社会問題化され、東京労働局が同社を家宅捜索、労働基準法違反で書類送検され、2017年には当時社長であった石井直氏が引責辞任した。 【マンガ】まさか、こんなものもまで…実は「メルカリ」売れる意外なもの その後、東京簡易裁判所から「法人としての電通」に有罪判決を下された同社は、労働環境改革を最優先事項に掲げ、新たに社長に就任した山本敏博氏がその責任者として小柳はじめ氏に時短改革の白羽の矢を立てる。 “電通の伝統”からの脱却を激闘するなか、1ヵ月で10万時間の削減を実現した同氏。その手腕を著書の『鬼時短』から抜粋・編集しお伝えする。
「現場で考えろ」は経営者の決まり文句
社長が「それを言っちゃあおしまいよ」という言葉を発してしまったばかりに、せっかくの社内のムードをぶち壊しにしてまうケースも少なくありません。そのNGワードが、 「現場で考えろ」 「うまくやれ」 「それをどうにかするのがきみたちの仕事だろう」 です。いずれも平時には「管理職」たちによって愛用されている言葉です。 これらは緊急事態には、現場のやる気を削ぎ、改革をストップさせる効果しかありません。企業の社員は、経営者がときどきぶち上げる華々しい改革宣言を冷ややかに見ています。 会社が外向きのお化粧をしているだけなら、利害は同じだからつきあってもいいけれど(そのために「面従腹背」テクニックも使う)、本当に自分たちの仕事のやり方を変えなければならないとなると話は別。 ましてそんなときに、「現場の知恵で、うまくやれ」とは何ごとか。社長が新卒入社・内部昇格の場合は、「昔の自分を棚に上げてよく言うよ」となるのがオチです。 経営者が平時に発信する言葉は、ほとんどすべてが形式的で画一的な決まり文句です。 毎年いつでも「いままで見たこともないような劇的な変化が来て」おり、そのため「これまでの常識が通用しない」。そして「生き残るのは大きくて強いものではなく、変化に対応できる柔軟な生物だ」というダーウィンの言葉を紹介し、「失敗を恐れずに挑戦する気持ちを大事にしてほしい」と結ぶ。 これなら、ChatGPTのような生成AIに原稿を書いてもらうことも可能ですね。わざわざ「経営企画部」や「社長室」の精鋭の手をわずらわせる必要すらありません。 いつもの決まり文句を聞いている幹部社員の方々も、うんうんとうなずいてメモをとるという「伝統芸能」をこなします。 そして、幹部たちはご自分の指揮下の《現場》の集会で社長の訓示を再現コピペして「変化」「柔軟」「失敗を恐れず」などと言う。集会に出たみなさんも、うんうんとうなずく。