森林の放射線量、地上から測定 4足歩行ロボットに機器搭載 帰還困難区域の除染へ前進
除染が手つかずの帰還困難区域の森林再生を進めるため、日本原子力研究開発機構(JAEA)は4足歩行ロボットに空間放射線量測定機器を載せた装置を開発した。走行ルートを記憶して移動でき、これまで人が立ち入れなかった森林内でも測定できる。林野庁は森林内の起伏の少ない場所で装置を導入する方向で検討を進める。3日、福島県浪江町で装置の実演が行われた。 森林の線量は空から測定し、実態を把握できていない。被災自治体は帰還困難区域解除のため長年除染を求めており、装置が実用化されれば、除染や住民帰還に向けた基礎資料としての活用が期待される。 米国の会社「ボストンダイナミックス」社製の既存の4足歩行ロボット上部に、測定機器と小型カメラを搭載した。走行ルートや、安定的に走行できる方法を記憶できる機能を備え、2回目以降に同じ場所で測定する場合、無人で動かすことができる。衛星利用測位システム(GPS)の電波が届かない場所でも使用できる。
森林の中で精度が高い数値を測れるのが特徴。高線量の場所など細かな地点も記録できる。ただ、走行できる斜度は30度程度までに限られ、斜面でロボが転倒した場合は人の手が必要になるなど課題もある。 実演は山林内で行われ、JAEA側が帰還困難区域を抱える自治体の担当者らに装置の概要を説明した。傾斜のある奥まった場所などで装置を動かし、線量を測定した。JAEAは今後も試験を重ね、装置が使用できる場所や天候などの条件を詰めていく。 装置は既に東京電力福島第1原発構内の高線量の場所で試験的に使われている。林野庁は林道など平たんな場所にも装置を取り入れる方針。担当者は「装置を問題なく動かせる場所であれば、試験的に導入する方向で検討したい。森林の線量を図る有効的な手段を今後も探る」としている。