ホテルの料金が高騰 コロナ禍前より2割高、年末年始も高そう 訪日客増加が上昇に拍車
広島県内でホテルの宿泊料金が高騰している。食材費や人件費の上昇を受け、新型コロナウイルス禍前より2割高いホテルもある。円安を背景に訪日客の増加が料金の上昇に拍車をかけ、年末年始も高値になりそうだ。 【写真】宮島口に開業するヒルトンの「LXRホテルズ&リゾーツ」の完成イメージ 広島市中区のホテルインターゲート広島は11月、宿泊客の半分を訪日客が占めた。料金は前年同月に比べて1割ほど高い。11月の全体の客数は、先進7カ国首脳会議(G7サミット)の広島開催で追い風が吹いた前年を上回る。 料金は宿泊需要に応じて変動するダイナミックプライシングで決めている。コロナ禍が落ち着きイベントが増え、宿泊客が増加。円安で訪日客の利用も増え、料金が上がった。食材や清掃、消耗品などの費用もかさみ、首藤淳也支配人は「心苦しいが、料金に転嫁せざるを得ない」と語る。 人手不足も影響している。宮島(廿日市市)のホテル菊乃家は、11月の宿泊料金が1泊2食付きで1人平均約2万5千円。2019年の11月より2割高い。コロナ禍が落ち着いて以降、段階的に引き上げている。 人材を確保するためには待遇改善が欠かせない。菊川泰嗣社長は「雇用を維持するために料金の引き上げは必要」と説明する。「円安もあり、訪日客には料金の割高感がないようだ。日本人客にも来てほしいのだが」と複雑な胸の内を明かす。 ホテル・レストランの業界誌「ホテレス」の調査によると、全国のホテルの10月の客室平均単価(速報値)は1万5541円と前年より11・9%上がった。記録の残る13年以降で10月としては最高。客室の平均単価は23年3月から20カ月連続で毎月の最高を更新した。 全国的にホテルの稼働率はコロナ禍前の水準に戻っている。観光庁がまとめた10月の宿泊旅行統計(1次速報)によると、全国の客室稼働率は66・1%と19年10月を2・5ポイント上回った。 広島県内のホテルの関係者は「これだけ訪日客が多いのに、宿泊料を下げる理由がない。周りの競合ホテルも下げない」と状況を説明する。別のホテルの支配人は「サービスが料金に見合うと評価されなければ稼働率は落ちる」と、料金の高騰がもたらす客離れを懸念する。
中国新聞社