土地争い(9月25日)
土地は命の食を育み、住まいを支える。暮らしと分かちがたいからこそ、いざこざも尽きない。誰に属するのか主張が食い違うと、丸く収めるのに時間がかかる▼県内でも争論の歴史がある。桑原村と宮下村(いずれも現三島町)は薪[まき]や炭を集める土地の帰属でもめた。1597(慶長2)年、太閤[たいこう]検地による年貢負担で対立し、明治時代には裁判になった。所有の方は決着したが、裁判費用をどちらが払うかで訴訟に発展した。和解したのは1880(明治13)年。解決まで実に300年近くを要した。福島市の県立図書館に来月2日まで関連史料が展示されている▼海の向こうの事情は、領地にまつわる長い因縁に周辺国も絡んで複雑、多難だ。イスラエルとイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザを巡って衝突を始めて間もなく1年。犠牲者は3万5千人を超える。収束への世界の期待は日ごとに高まるが、解決の気配は見えない▼日本の里山には、かつて共同利用の「入会地」があった。村落の住民が秩序を守り、生活に必要な物資を仲良く得たという。聖書の「地の塩」は人心や社会の模範たれ―の願いとされる。東西の教えに望みを託す。大地に新たな一歩を。<2024・9・25>