Oasis、北米公演では導入せず 大混乱を招いた「ダイナミックプライシング」の動向に賛否の声
8月27日にOasisが再結成を発表。2025年にツアー『Oasis Live '25』を開催し、カーディフ、マンチェスター、ロンドン、エディンバラ、ダブリンで公演を行うことを伝え、世界中のロックファンが歓喜した。しかし迎えたチケット発売日である8月31日、導入されたチケット販売システム「ダイナミックプライシング」によってチケット価格が高騰。世界中で大きな混乱が生じた。これを受けて9月30日、追加発表された北米公演では本システムを導入しないことが発表された。 【画像】ノエル・ギャラガー、日本公演での勇姿 「ダイナミックプライシング」とは、商品やサービスの需要に応じて販売価格を変動させる仕組みのことで、日本語では「変動料金制」とも呼ばれている。本システムは、シーズンによって需要が大きく変わる旅行業界で導入が進んでおり、ホテルの宿泊料金や航空券などで実際に経験している方も多いのではないだろうか。 本システムは、近年音楽業界においても導入が進められており、需要に合わせてコンサートのチケット価格に変動を与えている。そんな中、Oasisの再結成ツアーにおいて発生した問題が、その爆発的な需要によるチケット価格の異常な高騰だ。SNS上では「チケットの値段が148ポンド(約2万8000円)から355ポンド(約6万8000円)に上がった」という投稿も見られ、「価格を不当に釣り上げているのではないか」と、不透明なシステムに世界中で疑問と怒りの声が挙がった。またすぐに転売サイトでも販売され、高いものは7800ドル(約114万円)の値段がついたという(※1)。この状況を受けて、イギリス政府も本システムの利用について調査することを約束し、首相もコメントを発表した(※2)。 Oasisは今回の北米公演に「ダイナミックプライシング」の導入を取りやめた経緯について、「ダイナミックプライシングは、チケット転売対策として有効なツールで、チケット価格を市場価格よりも低く抑え、より手頃な価格にできるという点で多くのファンに広く受け入れられています」としたうえで、「しかし、チケット発売時にツアーの倍率が何倍にもなる状況におけるる前例のないほどのチケット需要と、その需要に対応できないシステムが合わさると、その効果は低下し、結果としてファンにとっては受け入れがたい経験となる可能性があります」と説明。その結果、今回発表された北米ツアーでは、先に発表されていたイギリスおよびアイルランドでのライブでの状況を踏まえ、「ファンが最近経験した問題の再発を避けるべきだと考え、この決定に至りました」とのこと。 SNSではこの判断に対して「ファンのためにありがとう」「アメリカのファンが同じ目に合わなくて嬉しい」という声もある一方で、「アメリカの観客の方がイギリスの観客よりも価値があるのか」「差額を返金してほしい」といった非難の声も挙がっている。 大混乱を招いた本システムだが、日本では2019年12月に開催された『ayumi hamasaki COUNTDOWN LIVE 2019-2020 ~Promised Land~ A』にて、浜崎あゆみが国内アーティストで初の導入をしている(※3)。またグローバルに活躍しているK-POPアーティストにも導入が進んでいきそうだ(※4)。 需要の高いアーティストの場合には、従来よりも多くの収益が見込めるというアーティスト側のメリットだけでなく、観客側も場合によっては格安の料金でコンサートを楽しめたり、高い料金を払うことでステージに近い座席を確保できる可能性もあるなど、マイナスな側面だけではないは「ダイナミックプライシング」。まだまだ課題は多いが、日本でも導入が進んでいくのか今後の動向を注視していきたい。
伊藤聡志