フリマアプリで拳銃入れ10万円、手錠9万円…「警察装備品」管理の実情を警察庁に聞いた 着古した制服は自己廃棄も認められている
ネットで入手できる警察グッズ
実際、「警察グッズ」はネットでもよく目にする。特に制服や階級章、手帳が人気のようだが、マニアは手錠入れや警笛、「防犯」腕章など、細部にこだわったグッズを求めている。堂々と「本物」を謳うものもあれば、「撮影用小道具」「悪用厳禁、レプリカ品です」などと、注意を促しているケースもあるが、 「ネットで現職警察官の制服が売られている」 との情報を元に、警察が動いた事件は2001年1月に発覚した。神奈川県警の現職警察官の制服がインターネットのオークションサイトで複数、売りに出されていることが分かったのだ。当該の警察官は、制服を知人に渡したところ、この知人が勝手にオークションにかけたという。 2004年2月には、本物そっくりの警察官の制服を着て電車内を“パトロール”していた無職の男が軽犯罪法違反(称号等詐称)などの疑いで警視庁に逮捕された。男は警察グッズの収集が趣味で、通販で買ったものを警察官の制服に似せ、警棒やおもちゃのけん銃も装着。手帳がない代わりに「鉄道警察隊員特務係巡査部長」と書かれた名刺を用意していた(ちなみに“特務係”とは鉄道警察隊に実在し、スリを専門に捜査する係)。 2006年3月、ネットオークションで入手した警察官の制服を着て、300万円かけて改造したニセ覆面パトカーで“取り締まり”を行っていた警備員の男が神奈川県警に逮捕された。サイレンを鳴らし赤色灯を回転させて車に停止を命令し、「警察本部だ。免許証を見せろ。会社はどこだ」などと言いながら、切符を切られないことを不審に思った被害者の通報で発覚した。男は警察官に憧れていたものの「千葉、神奈川県警の試験を受けたが合格できなかった」と供述。それにもかかわらず、警察内部の専門用語を熟知していたという。 2012年3月には、現職の大阪府警巡査部長が警察手帳や記章を偽造しただけでなく、制服などを販売。6年間で1000万円以上を売り上げ、懲戒免職処分となっている。また、昨年3月には「公安の警察官僚で警視正」を名乗り、制服姿や警察手帳の写真を見せて女性を騙し、結婚詐欺をはたらいた男が大阪府警に逮捕されている。 マニアが純粋に楽しむだけならいいが、警察グッズ、それも制服は悪用されると事件に発展する。富山の事件で狙われた「廃棄予定」だった警察の備品は何年ほどで廃棄するのか、また、貸与品などの管理はどうなっているのか、警察庁に聞いた。 「警察庁では、拳銃入れや手錠等の貸与品の使用期間に関する指針等は示しておらず、都道府県警察で個別に故障状況や損傷具合を判断して廃棄を行っています。退職の際には、各警察官に支給又は貸与している物品(制服等)は返納されています。なお、制服は貸与品ではなく、支給品であるため、着古した制服については、エンブレム等を返納させた上で、退職者による自己廃棄を認めている場合もあります」 退職者の中には制服を奉職の記念に保管しているケースはあるという。ネットを中心に「警察グッズ」が販売されている実態については、 「警察庁においては、支給品や装備品等について、悪用等が行われることのないよう、平素から個々の警察官が保有する支給品等の現物確認を行ったり、廃棄に当たっては裁断等の措置を講じた上で廃棄するなど、適正な管理を行うよう、全国警察に対して指示を行っているところです」(同) 最近は「オレオレ詐欺」の現場でも、被害者を信用させるため、テレビ電話やLINEのビデオ通話に、警察手帳を提示したり、制服を着たりした“警察官”が登場した事例もある。制服を着ているからと言っても、安心できない時代になってしまったようだ。