暴力パワハラ問題根絶へ「指導者もアップデート」を 日仏の違い、柔道五輪金メダリスト谷本歩実さん
▽学び続ける大切さ ―日本スポ協の調査で23年度は窓口への相談件数が過去最多の485件。暴力は減少しているが、暴言が増加傾向に。39%と最も多かった。被害者の内訳は小学生が最多の42%で、中学生は12%、高校生は13%だった。 「殴る蹴るは駄目だというのは当たり前になった。ただ暴言については浸透していない。どこからが暴言なのか。子どもたちが不快なことや嫌だと思うものは全て暴言、ハラスメントになる。今度はそこを浸透させないといけない。反対に、科学的に感情に刺さるいい言葉というのはパフォーマンスもアップする」 ―ハラスメントを過剰に意識し、萎縮してしまう指導者もいる。 「ほとんどの方はすごくいい指導をされて、日本のスポーツが成り立っている。とても感謝している。私も指導者として自分自身が変わっていかないといけないと感じる。大切なのは学び続けること。柔道教室をやると今までは子どもたちが円になって先生方は外で見守って静観している方が多かった。今では子どもたちの周りを先生方が囲ってメモを取ったり動画を回して、先生方がすごく学んでいる。これは本当に変わったなと感じる。現場の状況は毎日変わる。思いやりを持って、それぞれの立場に立って考えないといけない。スポーツの価値が伝わる環境になることを願っている」
谷本 歩実さん(たにもと・あゆみ)柔道女子63キロ級のエースとして04年アテネ五輪、08年北京五輪ではオール一本勝ちで2連覇。10年に現役引退後はパリに留学。指導者としては女子日本代表コーチなどを歴任。現在は日本オリンピック委員会(JOC)で理事、アントラージュ専門部会の部会長を務める。24年パリ五輪は日本選手団副団長。42歳。愛知県出身。