『マル秘の密子さん』密子の正体が明らかに 痛みを大粒の涙に変える福原遥の圧巻の演技
変わりたいと願う人をサポートするトータルコーディネーターの密子(福原遥)。けれど、本当に変えたいのは自分自身だったのかもしれない。『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)第4話では、謎に包まれた密子の正体が早くも明らかになった。 【写真】丈晴(山中聡)と対峙する密子(福原遥) 謙一(神保悟志)が進めていたプロジェクトを実現させるべく奮闘中の夏(松雪泰子)。運命の社長選を目前に、兼ねてより九条開発の体制に不満を持つ役員たちが少しずつ彼女のもとに集まり始めていた。そんな中、図ったように会社を訪ねてきたのは夏の夫・丈晴(山中聡)だ。家を突然出て行ったきり、何年も連絡が取れなくなっていた丈晴はいきなり夏に金を無心する。 金にも酒にもだらしなく、家族に暴力まで振るっていた丈晴。それでもなお、子供たちにとってたった一人きりの父親だからと手を差し伸べようとする夏に対し、密子は徹底的に丈晴を排除しようとする。冷静に裏で人を操ってきたこれまでの彼女とは、結びつかない強引なやり方に驚いた人も多いだろう。もちろん、次期社長となる人間に後ろめたいことがあってはならず、夏のためにも丈晴を排除する必要はある。だけど、密子が躍起になるのはそれ以上に彼女の生い立ちが関係していた。 丈晴が酒を飲んだ勢いで会社に乗り込んできたとき、普段は何があっても動じない密子が怯えた表情を見せる。その瞬間、密子の脳裏にフラッシュバックするのは自分の父親が暴れる姿。そう、彼女もまた家庭内暴力の被害者だったのだ。本名・小原密子は幼少期に父親から逃れるために、自ら児童養護施設に駆け込んだ。代わりに父親の暴力で死にかけたのが、姉の鞠子(泉里香)。謙一が大怪我を負った火事で命を落とした九条開発の秘書だ。 子どもたちを丈晴から守ってきた夏の姿が、いつも身を挺して自分を庇ってくれた姉の姿と重なったのだろう。どうしようもない夫でさえも見捨てられない夏の代わりに、密子は丈晴を追い詰めていく。 この第4話で主演・福原遥の真価が発揮された。丈晴の身動きを封じ、数々の拷問道具をちらつかせて脅しにかかる密子の表情は狂気を孕んでいる。けれど、丈晴が挑発にかかると、その瞳には恐怖の色が浮かんだ。「家族なんて心を縛る鎖でしかない」と夏に言った密子。彼女の心は大人になった今も、父親に縛り付けられている。 密子が誰よりも変えたかったのは、そんな弱い自分だったのだろう。本当は自分の手で父親を殺したかった、姉を守りたかった。その思いが爆発し、丈晴を手にかけようとした密子を間一髪で止めたのは夏だ。他人に遠慮ばかりして、自分の本当の気持ちに耳を傾けてこなかった夏。そんな自分を変えてくれた密子に、夏は「私があなたの分まで、ちゃんと痛がるから。だから、あなたはもう苦しまなくていい」と強く訴えかける。そして、この言葉を授けた。 「あなたが変われば世界は変わる」 密子が変わりたいと願う人たちにかけてきた魔法の言葉だ。それが巡り巡って、今度は彼女自身の心を救う。最終回でもおかしくない展開と、密子がこれまで抱えてきた痛みを大粒の涙に変える福原の圧巻の演技に胸が熱くなった。 トータルコーディネーターと顧客という関係性を超えて、自分の人生を切り開いていく同志のような存在となった密子と夏。自然と密子からはビジネスライクな雰囲気が消え、幼い頃自分にとってご馳走だったかき氷を姉と食べた思い出を夏に語る。もう一つ、大きな謎として残っているのが、密子の姉・鞠子の死の真相だ。密子が謙一から夏たちをサポートするように依頼されたというのは嘘で、本当の目的はそこにあった。 夏を邪魔するように丈晴をそそのかしたのは九条家の人間であり、自分たちの目的のためなら手段を選ばないその非道さも明らかになった第4話。鞠子が命を落とした火事の現場にたまたま居合わせ、そこから足早に立ち去った人物を目撃したという丈晴は、何者かにビルの屋上から突き落とされる。その直前、丈晴が密子たちに伝えようとしていたのは遥人(上杉柊平)の名前だった。記者を雇って密子の素性を調べさせ、その過酷な人生を知った遥人。一瞬、密子に対し同情するそぶりを見せていたが、本当に彼が謙一のプロジェクトを破滅させるために鞠子を殺めた犯人なのだろうか。
苫とり子