<STAP細胞問題>小保方氏らも参加する「学術シンポジウム」で決着を
著者から「科学的な反論」はなかった
遠藤氏は、この解析結果を今年5月、理研の本部に報告しました。その内容はCDB(発生・再生科学総合研究センター)を通じて、小保方氏を含むSTAP細胞論文(7月2日に撤回)の著者たちに伝えられました。しかし、「(小保方氏がそれを受け取ったかどうか)確認はとれていません。科学的な反論はありませんでした」(遠藤氏)。 理化学研究所の改革委員会が「提言書」をまとめる際には、遠藤氏は同委員会のヒヤリングを受けました。『日経サイエンス』誌が理研の内部資料を入手して、その内容を「号外」(6月11日PDF公開)したこともありました。そしてそのまま、遠藤氏は解析結果を論文としてまとめて投稿し、その論文は査読を通って、公表されたのです。 「(小保方さんに対しては)特に言いたいことはありません。“誰が”ということには興味ありません。“論文”については、こういう間違いのある論文はままあるので、誠実に対応してほしかったと思います」(遠藤氏)。
より多くの専門家による議論が必要
「STAP細胞があったかなかったのか?」ということについては「この論文は何もいっていない」と遠藤氏は説明します。しかし、STAP細胞論文の共著者である若山照彦氏も丹羽仁史氏も、遠藤氏の解析結果を読んだにも関わらず反論しないということは、事実上、この論文には不正があり、かつ再現性もない、つまり「STAP細胞は存在しない」ことを認めているようにも読めてしまいます。 こうした科学的な論争に決着をつけるためには、より多くの専門家による批判とそれへの反論が必要です。理化学研究所は、これまでのような記者会見だけではなく、幹細胞科学の専門家たちが参加することを前提とする「学術シンポジウム」を開き、小保方氏と遠藤氏を――できれば若山氏や丹羽氏も――ともに登壇させて議論させるべきではないでしょうか。 合同取材の席で、理研の生越(おごし)満・経営企画部次長は筆者の質問にこう答えました。 「ご意見として賜ります。いま進行中の調査の結果が出た段階で必要があったら検討します」。 理研の信頼、ひいては日本の科学の信頼性を取り戻すためにも、まずは科学者コミュニティ内部でその自浄能力を示してほしいものです。 (粥川準二/サイエンスライター)