気温50度の中で消火活動、インドの消防士 「二重に」過酷な状況
インド首都は今年、記録的な高温を記録しており、50度近くに達した日も何度かあった。ロイターは消防隊に同行して取材を行った。隊員の多くは、猛暑と多数の火災という「二重に」過酷な状況で作業していると話した。 6月のある日、うだるような暑さの中、消防隊がデリーの街を駆け抜ける。隊員らは、旧市街で繊維店が入居する老朽化した建物で起きた大規模な火災に対応している。火を消すのに約250人の消防士を要した。 デリーの消防署にとって、夏は特に忙しい時期だ。しかし消防士のインデルビル・シン氏は、この夏ほど多くの火災に対応した記憶はないと話す。「私の32年のキャリアの中で、今年は最も暑い年で、デリーの消防は今年最も多くの火災通報を受けた。毎日少なくとも200─250件の通報がある」 デリーでは今年、記録的な高温が観測され、50度近くに達した日も何度かあった。科学者らは、この暑さは人為的な気候変動によって悪化していると指摘する。 消防当局のデータによると、4月から6月の間に9000件以上の火災通報があった。これは1年前の2倍以上だ。そして、その期間の死亡者数は、1年前の10人から、3倍以上に増加した。 ロイターは10人以上の消防士や職員に話を聞いた。多くは、極度の暑さと燃え広がる火災という「二重に」過酷な状況で働いていると語る。シフトは24時間続き、その後1日の休みを取る。 デリー消防局長のアトゥル・ガルグ氏は、消防隊員は手薄になっていると語る。「彼らは眠ることも休むこともできない。私たちの仕事は肉体労働だからだ。ロボットなどを使うことはできない。人間が中に入らなければならず、煙と熱を吸い込んで、疲れ果ててしまう。だから消防当局は今、本当に手一杯な状況だ」 当局者によると、今夏の火災の4分の3近くは、電気系統の故障が原因だという。デリーが記録上で最も長い熱波に見舞われる中、冷房の需要が急増している。エアコンのような電力を大量に消費する電化製品を絶え間なく使用すると、市内の古い配線に大きな負担がかかる。ケーブルや機器の不適切なメンテナンスもショートや火災の原因になる可能性があるという。 デリー消防局のソムビル・シン氏は「火災の原因の70%以上は電気関連で、電気的な原因としては、過負荷、2つ目はショート、3つ目は過熱だ」と説明した。 消防当局は、商業ビルに毎年、火災関連の監査の提出を義務付けることを提案している。当局者によると、これによって事業者は建物内の配線が高負荷に対応可能かどうかを確認できるという。 350人の消防士志望者が訓練を受けており、8月までに消防隊が強化される見通しだ。当局はまた、混雑した道路を通行できる小型車両や、アクセスが困難な地域向けの技術も調達している。