「日本のキャプテン」を託されて:小粋なプレーメーカー・山本理仁が見せた意地とこだわり、一仕事
AFC U-23アジアカップ第2戦で、UAE代表に2-0で勝利したU-23日本代表。決勝点をアシストした山本理仁が見せた「意地とこだわり」を現地で取材する川端暁彦氏が綴る。 【動画】山本理仁の正確なクロスから決勝弾! 【取材・文=川端暁彦】
「不完全燃焼」だった初戦
悔しくなかったと言えば、嘘になるだろう。 AFC U23アジアカップの第1戦、先発していた山本理仁(シント=トロイデン)は、わずかな時間でピッチから退くことになった。CBの西尾隆矢が退場したため、代わりのCBを入れるために交代を余儀なくされたのだ。 交代ボードに自分の背番号が出た時には、「俺かぁ」と思ってしまったのも無理はない。この指揮官の判断について、山本は理性で納得している。 「後ろは間違いなく高さも必要なので(CBを新たに投入して)固めないといけないし、(山田)楓喜は一発セットプレーがあるし、(細谷)真大も代えられない。(平河)悠も強度を出していて、(松木)玖生もジョエル(藤田譲瑠チマ)も強度が出る。そうなると、やっぱり勝っている状況もあって、僕を外すのが妥当なのかな、という。あとで考えて、そう思いました」 大岩監督からは謝られたと言い、「僕も本当にチームとしてパリに行くためにここに来ているので、飲み込まないといけないし、特に何か思っているわけじゃない」と言う。ただ、個人として「不完全燃焼の試合だった」のも間違いない。「20分しか出てないのでやれますよ。次っすね、僕は」 冗談のスパイスをまぶしながらのコメントに、確かな決意がこもっていた。
「日本のキャプテン」を託されて
そして迎えたUAEとの第2戦、山本は左腕に腕章を巻き、チームの先頭に立って入場してきた。大会を前に副主将に指名されていた山本は、先発から外れた盟友のMF藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)からキャプテンマークを預かる形になっていた。 「やっぱり恥ずかしいプレーはできない」 日本のキャプテンとして臨むパリ・オリンピックを懸けての公式戦は、やはり少し特別なものだったらしい。 「今日はロングボールが多くなるって予想されていましたし、やっぱりそこで『戦う』というところは自分の中で意識してました」 一般的に山本はファイタータイプのMFというより、エレガント系の選手と思われている。沈着冷静にボールをさばき、ゲームの流れを読んで組み立て、鋭いキックからのアシストを得意とする。そんなイメージだ。 実際、技巧派タイプには違いないのだが、強度を出すということに関しても、特にプロ入り後は意識して取り組んできた。球際でのタフネスは明らかに以前の彼ではないし、何より本人が「最低限」というワードで形容するチームのためのハードワークは、以前よりわかりやすく発揮されるようになっている。 この試合もそうだった。接触プレーから逃げることなく、「まずは入りのところでなめられないように一発ガツンと行くところを意識していた」と言うように自ら率先して体を張ってプレー。UAEに中盤の主導権を最後まで渡さなかった。