坂本冬美の『モゴモゴ交友録』LiSAさん(37)ーーコンサート当日は朝8時半会場入りからの “ルーティン” に驚愕
ーー人を見た目で判断してはいけない……。 わたしはそんなふうに教わってきた昭和世代ですから、初めましての方とお会いするときは、なるべく先入観を持たずに……と心がけていますが、それでもあれこれ想像してしまうことがあります。 【写真あり】坂本冬美をもっと見る で、実際にお会いしてみると、あれ!? イメージと違うぞ……ということも、しばしばです。 「モゴモゴSPECIAL」で対談させていただいたLiSAさんもそのお一人でした。 歌のイメージと髪の毛の色から、勝手に強い人なんだろうなと思っていましたが、実際にお会いしたLiSAさんは、とっても穏やかで、しかも繊細で。話のひとつひとつも、驚きの連続でした。 わたしたち歌うことを仕事にしている人間は、ステージに立ったときにどうやったらいいパフォーマンスができるか、そのためには、どういう喉のケアをするのがいいのかを考えます。いろいろなことを試しながら、自分にとってのベストを見つけ出していくのですが、LiSAさんのそれはすごすぎです。 オフの日にも声を出しているということにも驚きましたが、コンサートのある日は朝8時半には会場に入り、マッサージの後、キックボクシングで汗をかいて、お風呂の蒸気の中で発声練習。昼食を摂りながら記録映像を観て、そこからまた発声練習とキックボクシング。リハーサルの前にこれだけのことをするというのは、ただただ驚愕です。 年齢はもちろん、歌手としてもわたしのほうが先輩ですが、歌に対する考え方、ステージに臨む姿勢は尊敬しかありません。 羨ましいことに、発声練習をしなくても、いい声を出している方はたくさんいます。 そんな方を見ると、 “はぁ” と溜め息をついてしまいますし、発声練習をやってもやっても思うような声が出せないときは、 “もう、やだ。発声なんてやめちゃおうかな” と思うこともあります。 でも、そこでやめてしまったら、ステージで思うような声は出せません。だから、つらくても、いやでも、泣きながらでもやるしかありません。 声を出していないと不安でしようがないという意味では、わたしとLiSAさんは同じタイプの人間なんだと思います。でも、LiSAさんのすごいところは、ベストなやり方を求め続け、もがき、あがきながらでも、それを継続していることです。 ーーえっ!? 努力なら負けていない? それは違います。わたしのは努力ではありません。わたしが考える努力というのは、プラスアルファを求めて何かをやること。わたしが泣きながら発声練習をしているのは、やらなきゃいけないことです。体調に気をつけて、ときには何かを我慢してというのも、当然のことであって、それは努力とは呼べません。 LiSAさんとわたしに共通するものがあるとしたら、その苦しさから “逃げない” という気持ちです。 いい歌を歌って、お客様から拍手をいただくーー。 あの瞬間の気持ちよさは忘れられないし、ほかの何かには代えられない。それがいちばんの幸せだということをわかっているからです。 ジャンルの違うLiSAさんとこういうお話ができたことはすごく嬉しかったし、勇気をいただきました。 ハイトーンボイスで、ステージでは自信満々で歌っていらっしゃるLiSAさんが、そんな思いをしてステージに立っているんだと思ったら、わたしも頑張らなきゃ! もっと自分の歌と向き合って、ステージに立たなきゃダメだと、あらためて教えていただいたような気がします。 ありがとう、LiSAさん! さかもとふゆみ 1967年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。 写真・中村 功 取材&文・工藤 晋
週刊FLASH 2024年9月17日号