3・11避難者が住宅退去訴訟で目黒区に敗訴 自己責任と切り捨てる判決
自治体の「努力義務」とは
報告会で山川弁護士はさらに、判決が被災者の権利権益を認めないことに加え、自治体の被災者支援はそれぞれの裁量によるものであり、支援をやってもやらなくてもいいとして被災者を切り捨てたと指摘。しかも本人に責任のない転居の件まで本人の責任にしている……と憤懣やる方なく語る。 友田さん夫妻は目黒区での避難生活中に一度、16年9月頃には区側が指定した別の応急住宅へと転居させられている。山川弁護士は、「これはかなり劣悪で極端な自己責任論であり、考え得る限りでの最低最悪な判決だ」と述べる。 被災者支援が各自治体の裁量に委ねられるとの旨を言っているのも深刻だ。被災者の権利に関わる最後の拠り所ともいうべき災害救助法第3条は「都道府県知事又は救助実施市の長」について「救助の万全を期するため」の「努力義務」を定めるが、これが実質的には支援をしないことも含めた各自治体の裁量問題に帰するとすれば「『万全』が空文化する。被災者を切り捨てていいとのメッセージをこの判決は出してしまっている」と山川弁護士は危惧する。 続いて発言した友田さんは判決について「出て行けと言われても出て行ける状況ではなかった」と涙ぐみ、声を絞り出すように思いを語った。支援団体「めぐろ被災者を支援する会」共同代表の堀田栄喜さんも「被災者に寄り添ってほしいとの思いからこれまで区に対して陳情したり、区長にも要請文を出したりしてきた。今後も支援を続けていきたい」と語った。 一方、目黒区は筆者の取材に、「今は控訴期間でもあり、現段階では答えられない」と回答、その後、友田さんは控訴を検討中という。
西村仁美・ルポライター