香港、国家安全条例で初の逮捕者 天安門事件の日付を前に
香港当局は28日、3月に可決された、香港での破壊行為や外国勢力による干渉などを取り締まる「国家安全条例」をめぐる初の逮捕者を発表した。6人が、ソーシャルメディアに中国政府に対する「憎悪を拡散する」投稿を行ったとして拘束された。 拘束されたのは、女性5人と男性1人で、民主活動家で弁護士の鄒幸彤(チョウ・ハントゥン)氏も含まれる。 当局によると、この6人は「センシティブな日付」を標的とした投稿を行っていたという。香港メディアは、これは1989年に中国で天安門事件が発生した6月4日だと報じている。 有罪となった場合、6人には最長で禁錮7年が科せられる可能性がある。 香港の憲法ともいえる「香港特別行政区基本法」の第23条に基づく国家安全条例は、外国勢力による干渉や、反乱などを犯罪行為とし、違反すれば最高で終身刑を科すとしている。 国家安全条例は、香港での反政府的な動きを取り締まる中国の「香港国家安全維持法」(国安法、2020年6月施行)を補完するもの。国安法ではすでに、香港の分離独立や破壊活動、テロ行為、外国勢力との共謀などの行為を犯罪と規定している。 香港政府は安定のために必要な条例だとしているが、同条例の施行により、市民の自由権がさらに侵害されるとの懸念が出ている。 人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは、今回の逮捕は「天安門事件の平和的記念式典を弾圧しようとする恥ずべき試み」だと批判し、鄒氏を含めた全員の即時解放を求めた。 鄒氏はすでに国安法で有罪判決を受け、現在服役している。 鄒氏はかつて、ヴィクトリア公園で天安門事件の追悼集会を開催する団体に所属していた。香港とマカオはこれまで、中国領内で例外的に天安門事件の追悼行事が行える場所だったが、香港当局は2020年以降、この集会を禁止している。 アムネスティ・インターナショナルの中国担当ディレクター、サラ・ブルックス氏は、「鄒氏が国家安全保障の罪で拘留されて1000日目となるのは来週、しかも6月4日だ。当局はこの機会に鄒氏のファイルに、犯罪と言われるものを新たに加えることで、自由を求める闘いを確実に延ばしたいようだ」と指摘した。 香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、28日の逮捕はフェイスブックのグループに関連したもので、そこには過去の出来事を思い起こさせるような投稿が相次いでいたという。 香港の鄧炳強保安局局長もこれを認めたものの、投稿の内容自体は問題ではないと説明。容疑者らについて、「中央政府と香港政府、そして司法に対する憎悪を扇動した」と述べたと、サウスチャイナ・モーニング・ポストは報じた。 (英語記事 Hong Kong arrests six for sedition under new law)
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