ETF承認の熱狂は、ビットコインにはウォール街が必要なことを示した
価格上昇とメインストリーム普及
もちろん、単純な答えは価格だ。一部の例外を除いて、この業界の大部分はいまだに暗号資産価格の気まぐれな動きに非常に弱い。 市場が低迷すれば、ベンチャーキャピタルは関心を失い、スポンサーや広告予算は減少する。消費者向けのサービスは、新規ユーザーの獲得が難しくなる。さらに、さまざまなアルトコインはビットコインに追随して上昇したり下落したりする傾向がある。 今回のビットコインの上昇は、大手金融機関とSECのおかげと言えるだろう。しかし、業界はあまり文句を言っていない。 メインストリーム普及に関する議論もある。つまり、現物ETFが承認されれば、暗号資産取引所に口座を開設したり、スマートフォンでウォレットをセットアップしたり、自宅のコンピューターでノードを実行したりすることが面倒な新規投資家が殺到することになる。 より基本的なレベルでは、ブランド力のある機関投資家が市場に参加することで、暗号資産を詐欺と結びつける投資家を安心させることができるかもしれない。 ETFのおかげで、暗号資産コミュニティは、2023年に続出したサム・バンクマン-フリード氏関連のニュースから解放され、比較的ポジティブなメディアの注目を数週間享受している。
信頼の証
ETFが本当にもたらすものは、より高い信頼性だ。この場合、ウォール街の関与は政府の承認が条件となる。SECが「市場操作」の懸念から何年もETFを拒否してきたにもかかわらず、今回、ようやく承認したことは、ビットコインを最も激しく批判してきた1人であるSECのゲーリー・ゲンスラー委員長が、不本意ながらも暗号資産をある程度受け入れたことを示している。 理論的には、暗号資産は政府から独立しているため、SECの存在はそれほど大きなものではないはずだ。しかし現実には、「クリプト・ツイッター」コミュニティは、ゲンスラー委員長の言動のほとんどに注目している。 とはいえ、ゲンスラー委員長の業界に対する明らかな反感は、規制の明確性の欠如や業界の主要プレーヤーに対する訴訟の数々となって表れているが、業界を消滅させたわけではない。 また、世界の他の地域、特にアジアで暗号資産がブームになることを止めたわけでもない。しかし、その代償は大きい。 SECの訴訟に何年も巻き込まれる暗号資産会社もある。また、世界最大の経済大国であり、資本と人材の主要な供給源であるにもかかわらず、アメリカを完全に避けることを選択する企業もある。 暗号資産には、ある程度の政府の承認が必要だ。またウォール街の関与も必要だ。暗号資産の未来は西部開拓時代のようなものではなく、世界で最も厳格な規制を持つ日本、香港、シンガポールのようなものだ。 分散型プロジェクトを構築することはそれだけで十分に難しいが、敵対的な規制当局、慎重な投資家、警戒心の強い消費者が存在することになる弱気市場ならなおさらだ。ウォール街のカルチャーが暗号資産業界を定義するのではなく、より多くの暗号資産プロジェクトが成功するための信頼性のお墨付きとなることを願う。 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:Shutterstock|原文:ETF Euphoria Shows Bitcoin Needs Wall Street After All
CoinDesk Japan 編集部