交代策がズバリとはまった帝京長岡、3-2で長崎総科大附を下し2回戦進出
第102回全国高校サッカー選手権1回戦が12月29日に行われ、千葉県の県立柏の葉競技場の第2試合で、10度目の出場となる新潟県代表の帝京長岡と9度目の出場となる長崎県代表の長崎総科大附が激突。2年ぶりの選手権出場を勝ち取った同士の一戦は、2度に渡ってリードを奪った長崎総科大附を、帝京長岡の逆転で振り切り31日の2回戦進出を決めた。 【フォトギャラリー】帝京長岡 vs 長崎総科大附 試合は序盤から手堅いゲームとなった。ボールを保持する時間は帝京長岡が長いものの、長崎総科大附は長いボールを徹底して使い反撃。山村朔冬、原壮志を起点にゲームを組み立てない帝京長岡だが、長崎総科大附の高負荷のプレッシャーと甲斐智也を軸とした右の突破を前に、試合の主導権を握りきることができない。 一進一退の展開が続く中、長崎総科大附は22分に中央でボールを奪った大屋麻尋が、帝京長岡GK小林脩晃の位置を見極めて絶妙のロングシュート。この予想外の一撃が決まって長崎総科大附が先制。この1点で勢いを得た長崎総科大附は守備でもアラートさを増していくが、帝京長岡も前半終了間際にクロスが流れたところを橋本燦が押し込んで同点に追いつく。 長崎総科大附は後半から攻撃の切り札である尾島栞蓮を投入し、強引なほど縦に押し込むサッカーを展開していくが、帝京長岡も水川昌志とDF陣が体を張った守備で対抗。長崎総科大附のGK山口海翔、帝京長岡のGK小林の好守もあって、同点のまま試合は続く。 このこう着状態を破ったのは長崎総科大附。59分に左からのクロスが流れたところを仲宗根惺がアクロバチックなシュートで押し込み2-1と勝ち越しに成功。これで結果は決まったかと思われた試合だったが、ここからまさかの展開が待っていた。 1点を追う帝京長岡は61分に「点を取ることではチームの中でも指折り(古澤)」というFW谷中習人を投入すると、67分、縦パスを受けたその谷中が相手ゴール前までボールを持ち込んでからのシュートで2-2の同点。試合終了間際にも左のクロスを遠いサイドで受けた谷中が冷静にシュートを決めて逆転に成功。交代策がズバリとはまった帝京長岡が3-2で長崎総科大附を下し、1回戦を突破した。 「まだまだ甘さがあった」 2度のリードを奪いながら追いつかれ、最後は逆転を許した長崎総科大附の定方敏和監督はそう呟いた。県大会に比べて選手たちに若干の固さは見られたが、決して悪いパフォーマンスでなかっただけに悔しさはひとしおだろう。だが、昨年1月に死去した故小嶺忠敏監督の跡を引き継ぎ、再びチームを選手権の舞台まで押し上げ、これだけの戦いを示せたことは今後の自信になったことだろう。 一方、「チームには可能性のある選手がいる中で、(選手権本大会のレギュラー争いは)フラットにやると話していた」という帝京長岡の古沢徹。その言葉に応えるように本大会前はスタンドで応援する立場だった谷中が試合をひっくり返した。古沢によれば、チームの中にまだまだそういう選手がいるという。インターハイ、選手権で県内二冠を達成し、念願のプレミアリーグ参入も決め、歴代屈指とも言われる強さは伊達ではないということか。次節、優勝候補の市立船橋を相手にどんな戦いを見せてくれるか実に楽しみなチームである。 (文・写真=藤原裕久)