プーチンがナワリヌイの次に「餌食」とする反体制派の指導者は誰か?
「ナワリヌイが殺されたのであれば、ほかの誰が殺されても不思議でない」ナワリヌイの死をめぐり国際的批判が高まるなか、ロシア政府の反体制派への弾圧が和らぐ気配はほとんどない
3月1日、モスクワ南部の教会でロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイの葬儀が執り行われると、逮捕の脅しにも屈せず、数千人もの市民が詰めかけた。【エイミー・マッキノン(フォーリン・ポリシー誌記者)】 【動画】反体制派の指導者 カラムルザの今を妻が語る 警察が厳重に警戒するなかで、多くの人が赤いカーネーションを手に持ち、なかには「プーチン(大統領)は人殺しだ」と声を張り上げる人たちもいた。 ナワリヌイがロシア北極圏の刑務所で死亡したことが発表されたのは2月16日。それ以降、ロシア各地の追悼行事に参加して身柄を拘束された人は400人を超える。 ナワリヌイの不審死により、ほかの服役者たちに関しても不安が高まっている。「ナワリヌイが殺されたのであれば、ほかの誰が殺されても不思議でない」と、ロシア有数の歴史を持つ人権擁護団体「メモリアル」の弁護士グリゴリー・バイパンは言う。 同団体の調べでは、政治的理由により収監されている人は現在679人。実際の人数はもっと多い可能性が高いと、バイパンは語る。 ナワリヌイの死をめぐり国際的批判が高まるなか、ロシア政府の反体制派への弾圧が和らぐ気配はほとんどない。 2月末には、メモリアルの幹部オレグ・オルロフがウクライナ戦争を批判したことを理由に2年6カ月の実刑判決を言い渡された。同じく2月には、ロシア系アメリカ人クセニア・カレリナがウクライナの慈善団体に50ドル余り寄付したことを理由に国家反逆罪で逮捕されている。 ロシア政府による反体制派の弾圧は、プーチンが権力を握ってからの24年間で加速してきた。2014年のクリミア併合以降はそれがいっそう加速し、22年にウクライナ全土への侵攻を始めた後はさらに逮捕者が急増している。 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、22年に戦争反対を公言したことで収監されたり、重い罰金を科されたりした人は、2万1000人を超すという。
次の標的の最右翼は...
23年には、ロシアとイギリスの国籍を持つジャーナリストで反体制派指導者のウラジーミル・カラムルザがウクライナ戦争を批判したことを理由に25年の実刑を言い渡された。 ナワリヌイが死亡した今、カラムルザは、ロシアの刑務所に収監されている最も著名な反体制派活動家だ。 「次はカラムルザだと思う。彼はプーチンの標的リストの非常に上位にある」と、アメリカに拠点を置く非営利団体の「自由ロシア財団」の理事長で、カラムルザの友人でもあるナタリア・アルノは言う。 カラムルザは過去に2度にわたり毒殺未遂で命を落としかけたことがあり、ロシアの刑務所の劣悪な医療体制を考えると、健康状態への不安はひときわ大きい。 一方、あまり知られていないが、ロシアの政治犯の中には宗教上の理由で収監されている人物が非常に多い。 その割合は、メモリアルによれば全体の3分の2近いという。03年に非合法化されたイスラム主義国際政治組織「ヒズブ・タフリール」のメンバーも大勢収監されている。 17年に「過激派団体」に指定された「エホバの証人」も厳しい取り締まりの対象になっている。17年以降に受けた強制捜査の回数は2000回以上、刑事告発された人数は794人に上ると、アメリカで同教団の広報担当を務めるジャロッド・ロペスは言う。 「ロシア政府が宗教弾圧の手を緩める兆しはない」と、ロペスは語る。 「それどころか、最近は激しくなる一方だ」 From Foreign Policy Magazine