給食中に支援学校の生徒死亡 県に賠償命じるも逸失利益認めず 「障害者差別と言わざるを得ない」原告代理人が痛烈批判
大分県にある特別支援学校で、女子生徒が給食をのどに詰まらせて死亡した事故をめぐり遺族が県を訴えた裁判で、大分地裁は1日、県に660万円の支払いを命じました。一方で将来得られたはずの“逸失利益”については認めないとし、原告の代理人は「障害者差別と言わざるを得ない」と痛烈に批判しました。 【写真を見る】給食中に支援学校の生徒死亡 県に賠償命じるも逸失利益認めず 「障害者差別と言わざるを得ない」原告代理人が痛烈批判 この裁判は2016年、別府市の県立南石垣支援学校で高等部3年の林郁香さん(当時17)が給食をのどに詰まらせて死亡した事故をめぐるものです。遺族は郁香さんに重度の知的障害があったにもかかわらず、食事中の見守りを怠ったことや適切な救命措置が取られなかったとして、県におよそ3700万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。 大分地裁で開かれた1日の判決で石村智裁判長は「郁香さんのそばを業務上離れる理由があったとしても周囲に声かけするのは容易かつ可能だったのにそれをせず、食事中の郁香さんを一人残したのは見守り義務に反する」として、県におよそ660万円の損害賠償を命じました。 一方、遺族側は障害基礎年金に相当する「逸失利益」について請求していましたが、大分地裁は「障害基礎年金は社会保障的な性格で、逸失利益であると認めるのは困難である」としました。 判決のあと開かれた記者会見で、母親の香織さんは「見守りをするべきだったと裁判所に認めてもらえたことはよかった」と話しました。逸失利益を認めないとした判断については「郁香は重度の障害があり、将来社会に出て働くことはできません。ただ、人の価値は働いてお金を稼ぐことだけではないと思います。認められず残念です」と涙を流しました。 代理人を務めた徳田靖之弁護士は「遺族の主張が認められた判決として高く評価できる。ただし今回は逸失利益性を否定した。裁判所は障害のある子どもたちの将来を全く見ようとせず、それを認めない。裁判所全体が大きく遅れているし、障害者差別と言わざるを得ない」と痛烈に批判しました。
県教委の岡本教育長は「本日の判決の中では大分県の責任が問われており、亡くなられた林郁香さん、ご両親及びご家族の皆様に対し、教育委員会を代表してお詫び申し上げます。改めて、亡くなられた林郁香さんのご冥福をお祈り申し上げます。 特別支援学校の児童生徒一人一人の障がいの特性に応じて、安全に食事が行われるよう、万全を期してまいります」とコメント。今後の対応については「判決の内容について十分に検討を行い判断する」としています。
大分放送