「あらしのよるに」歌舞伎座で再演 菊之助と共演の獅童「歌舞伎の要素、すべて凝縮」
東京・歌舞伎座で12月3日に開幕する「十二月大歌舞伎」第1部で、「あらしのよるに」が上演される。狼と山羊の友情を描いた同名の人気絵本(きむらゆういち作)が原作。狼がぶを中村獅童(52)、山羊めいを尾上菊之助(47)が勤める。 初演は平成27年、京都・南座で新作歌舞伎として上演。幅広い世代に支持されて再演を重ね、今回で5度目となる。歌舞伎座での上演は8年ぶり。初演から獅童が主演を務めてきた。 人気絵本の歌舞伎化は、獅童が20年ほど前にNHK教育番組「てれび絵本」で「あらしのよるに」の語りを担当し、「これは歌舞伎にできる」と思ったのがきっかけだ。 獅童は、バーチャルシンガーの初音ミクなど最新技術を使った「超歌舞伎」も手掛けるが、本作については「歌舞伎の持っている技法、音楽で言えば長唄であり、義太夫であり、役者の演技で言えば踊りがあって、立ち回りがある。歌舞伎の要素がすべて凝縮された古典歌舞伎のつくりにこだわった」と話す。 さらに「義太夫の語りは絵本の中の言葉なので、非常にわかりやすい。見ていただければ、義太夫というのは役者が演じている役柄の心情を語っているのがよくわかる」と解説した。 一方、菊之助は本作について「大人から子供まで幅広い世代が楽しめる作品をつくるという獅童さんの考えの下で出来上がった、素晴らしい作品だと思う」と絶賛。 その上で「狼と山羊との友情は現実的には虚だが、虚の中に友情や自分らしく生きるといった人間として普遍的な、そして大事なテーマが隠れていると感じる」と語った。 今回は獅童の長男、中村陽喜(6)と次男、中村夏幹(4)も出演する。12月26日まで。問い合わせは、チケットホン松竹(0570・000・489)。(水沼啓子)