日本人が気付いていない 中東問題によって起こり得る「厳しい状況」
地政学・戦略学者の奥山真司が11月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イスラエルとハマスの戦闘休止について解説した。
イスラエルとハマスの戦闘休止、2日間延長で合意
イスラエルとイスラム組織ハマスの仲介を担うカタール政府は11月27日、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘休止を2日間延長することで合意したと発表した。新たな合意が守られれば、戦闘休止は少なくとも29日まで延長されることになる。 飯田)戦闘休止5日目の11月28日、ハマスはイスラエル人10人と外国籍2人の人質を解放。一方、イスラエルも拘束していたパレスチナ人30人を釈放しました。
中東問題が日本に与える影響
奥山)アメリカのブリンケン国務長官が何度も中東を訪れています。アメリカ自身も一応は関与して、「人道に配慮してくれ」とイスラエル側に言っている状況です。我々にとっては「日本にどう関係してくるのか」が肝になります。「中東問題は我々には関係ない」と思う人もいるかも知れませんが、世界の秩序を担うアメリカにとっては非常に大きな問題であり、その余波が日本にも及ぶ可能性があるのです。 飯田)その余波が。 奥山)アメリカは世界に3つの戦略地域を持っていると言われます。3正面と呼ばれることもありますが、西ヨーロッパ・中東・東アジアです。
アメリカは3正面のバランスをどう取るか
奥山)西ヨーロッパは当然ですが、アメリカの先祖でもあります。中東は宗教的な場所であり、エネルギーがある。東アジアは最大のライバルである中国が台頭しており、この「3正面のバランスをどう取るか」を常に考えてきたのがアメリカです。 飯田)3正面のバランスをどうするか。 奥山)しかし、米国務省のリソースが割かれ、ブリンケン国務長官が何度も中東を訪問している。アメリカはいま、「どちらが最終的に国際秩序の中心的な柱になるのか」という最大の挑戦を中国から受けています。我々はそれを忘れてはいけません。
すべてを中国に集中させたいが、対処できていないアメリカ
奥山)本来であれば、いまのバイデン政権はしっかりと中国に対処するため、中東やロシアにリソースを割くことなく、「すべて中国に集中したい」というのが彼らの本音だと思います。実際、ウクライナやイスラエルの話はやめて、「すべてを中国に向けなければ、我々は頂上決戦で負けてしまうのではないか」と言う戦略家の方々もいます。 飯田)中国に向けるべきだと。 奥山)ところが、ウクライナは支援しなければならないし、イスラエルの最大の敵であるイランにも対処しなくてはならず、そちら側にリソースが取られてしまっている。アメリカの全体的なバランスを見ると、東アジアの中国にしっかり対処できない状況なわけです。 飯田)リソースを集中できない。 奥山)今回、中東で大きなトラブルがあり、アメリカが中東にリソースを全部向けているので、西ヨーロッパ正面にあるロシアや、東アジアの中国にとっては有利な状況なのです。アメリカが中東に力を注ぎ、ウクライナからも目をそらしている。ロシアや中国にとってはいいチャンスだと思います。 飯田)一息つけている? 奥山)一息つけている展開です。