返事はきた?地球の研究者が50年前に発信した「宇宙人向けメッセージ」の中身 パラボラアンテナから電波で撃ち出した
バイナリコードを解読できる知性があれば10進法も理解できるだろうし、それが理解できればその後に続くメッセージの内容も理解しやすいだろう、という研究者たちの最大限の親切心の現れでしょうか。 算数の後には、水素原子が出す光のスペクトル、DNAの構造、人間の形、太陽と惑星の大きさ、世界地図、地形の説明などが続きます。メッセージを受け取った相手が地球に連絡を取りたいときのために、地球が天の川銀河のどこにあってどの周波数で待ち構えているかという情報も盛り込みます。
ちょっと欲張りすぎな気がしますが、大丈夫なのでしょうか。 ■考案者が同僚に見せたら、大半がわからなかった アレシボメッセージを考案した地球外知的生命探査の先駆者であるフランク・ドレイクさんは、実際に宇宙に信号を送る前にノーベル賞受賞者を含む同僚たちに信号を見せてみました。 ところが、バイナリコードが画像になっていることに気づいたのはたったひとり、内容が理解できた人はひとりもいなかったそうです。このメッセージを受け取る宇宙人は、よほど知性が発達していなくてはいけません。
むやみに宇宙にメッセージを送るのは危険ではないか、と考える研究者もいます。車いすの物理学者スティーブン・ホーキング博士は生前、宇宙人からの信号を捉えても返信するのは危険だ、と語っていたそうです。 メッセージを頼りに宇宙人が地球を訪れたとしても、人類の文明は彼らにとってはバクテリアのようにとるに足らないもので、何の感慨もなく我々は消されてしまうのではないか、というのがホーキング博士の心配です。 ■どんな結末が待っているかはわからない
メッセージを読み解いたのならバクテリア扱いされることはないのでは? とも思いますが、相手がどんな考えを持っているかを知る手段はないので、どんな結末が待っているかはわかりません。 あなたなら、宇宙人にまず伝えたいことは何ですか? あるいは、どこかの星からメッセージが来ていることに気づいたら、現地に行って何をしてみたいですか? 実際にどう対応するかはともかく、宇宙人とのコミュニケーションを考えることは私たち自身について深く考えることにもつながります。
深く深く考えたその先に、まずは地球人どうしで喧嘩しないような知性を発達させていきたいものです。そして、何万年後かに来るかもしれないメッセージの返事を待ちましょう。
平松 正顕 :国立天文台 台長特別補佐、天文情報センター 周波数資源保護室 講師