スターバックスが「ガラガラ状態」に…ガザ侵攻によってマレーシアで起きている「不買運動」
同調圧力に弱い国民性なのか
「こういうのに弱いのが我々ムスリム、同調圧力が強いからです」と話したのは28歳のマレー系女性。 「たとえば、海外旅行のおみやげのお菓子をみんなで食べていて、各々がハラルフード(イスラム法の認証)ではないと気付いていながら、まあいいかと思うことがあります。でも、ひとりが『これハラルじゃないぞ』と言うと、みんな一斉に手を出さなくなる。 その一言がなかったら最後まで食べていたのに…ということはよくあります。だから、マクドナルドに行かないことも、政治的な理由より、周囲の目があるから、という人もかなり多い」 この機に、ムスリムがパレスチナ問題の立ち位置をハッキリさせなければならない背景はあった。イスラエル人とパレスチナ人の対立、もとは19世紀末、ヨーロッパのユダヤ人らが、聖地エルサレムのあるパレスチナに国家樹立を目指して移住していったことに、現地アラブ系住民が猛反発したのが発端で、第二次大戦後に国連がそれぞれの国家を作る決議を採択したことで48年にイスラエルが建国宣言。 これを認めないパレスチナ人やアラブ諸国と戦争になった。勝利したイスラエルは、当初の決議を大きく超える土地を領土とし、多くのパレスチナ人が居住地を追われ、難民となってしまった。その後も紛争は続き、エジプト領だったガザ地区もイスラエルが占領、テロ対策の名目で地区間に壁を建設して囲ってしまった。 しかし、時間が経過するにつれ、パレスチナ問題を無視してイスラエルとの国交正常化を進めるアラブ諸国の姿勢もあった。そんな中、起きたのが強硬派ハマスの越境攻撃。 「近年、なし崩し的にイスラエルに融和な態度をとっていた人々も、これで『どちら側に立つのか』と突き付けられた感じになったんです。みんな仲良くしましょうとか、平和的解決を、と考えていたような人も、一転して強く態度を表さなきゃいけなくなった」(44歳、マレー系男性) 「日本の人々はアメリカが好きなので理解できないかもしれませんが、もともと嫌悪感が持たれていた大国アメリカに対する潜在的な意識が形になってしまった面もあると思います」(62歳、20年以上マレーシア在住の日本人男性) しかし、5月あたりから少しづつマクドナルドやスターバックスでも、マレー系の客が見られるようになった。ハンバーガーを食べていた女性のひとりに話を聞くと、「私の周りには、パレスチナの悲劇と、マレーシアの店舗は関係ないという人が多いです。あとは行くか、行かないかは個々の判断でしょう」と答えた。 店のカウンターで働いていたのも同じムスリムの女性だ。 スターバックスにいたマレー系女性は、「飲食店をボイコットしたところで、問題が解決するわけがないのはみんな分かっていること」と言った。そのとおり、解決には停戦、そして両サイドの歩み寄りが不可欠。 不買運動より、問題の本質に向き合った方がよいというのは当然だ。誰かの呼びかけでもなく、不買運動に背を向ける人が出てきたのは良いことにも思える。
片岡 亮(フリージャーナリスト)