ヒラリー・クリントン氏のプロデュース舞台、トニー賞候補に 女性参政権獲得の歴史を描く
米演劇界最高の栄誉とされる第77回トニー賞の授賞式が現地時間16日(日本時間17日朝)、ニューヨークで行われる。今回、注目を集める候補作の一つが、ヒラリー・クリントン元米国務長官がプロデューサーとして参加している「サフス」だ。20世紀初頭、米女性が参政権を勝ち取るまでの史実をたどる作品で、ミュージカル部門作品賞を含む6部門にノミネートされている。 【写真】ヒラリー・クリントン元米国務長官は、ブロードウェーの常連。舞台「ウィズ」の初日に足を運んだ=4月17日、米ニューヨーク 作品は、自らを「サフ」と呼ぶ女性参政権論者たちが1920年、米合衆国憲法修正19条に、女性参政権を明記させるまでの闘いを描く。実在した女性運動家、アリス・ポール(1885~1977年)らが命がけで活動した熱意が、憲法修正に反対していたウィルソン大統領(当時)を翻意させる。 同作が2022年5月、オフ・ブロードウェーの小劇場で開幕した際、観劇したヒラリー氏は、自身のX(旧ツイッター)に「『サフス』出演者に感謝します。女性参政権を求める闘いを伝える今舞台は感動的で、私たちの仕事は決して終わらない、と思い出させてくれる」と投稿した。作品は評判を呼び、翌年春にはブロードウェーの大劇場上演が決定。ヒラリー氏と、パキスタン出身の人道活動家でノーベル平和賞受賞者であるマララ・ユスフザイ氏が、共同プロデューサーとして参加することも決まった。 「サフス」は今年4月18日から、ブロードウェーのミュージック・ボックス劇場で公演が始まった。女性の参政権獲得がテーマだけに、出演俳優だけでなくオーケストラも女性とノンバイナリー(性自認が男女のどちらでもない)で占められ、男性役も演じる。脚本と作詞・作曲、演出、振り付けも女性が担当している。 ヒラリー氏は開幕直後、米ファッション誌『ヴォーグ・ワールド』(WEB版)で同作の脚本と作詞・作曲、出演のシャイナ・タウブさんと対談した。記事では、作品について「今、参政権運動の物語を伝えることは非常に重要と考えた。女性の権利、人権、進歩のため、私たちが今も取り組む多くの闘いとつながっているからだ」と上演の意義を語った。 このほか、今年のトニー賞候補には、歌姫アリシア・キーズさんが作詞・作曲を手掛け、自身の体験を作品化した「ヘルズ・キッチン」が最多の13ノミネートされているほか、俳優のアンジェリーナ・ジョリーさんらがプロデュースするミュージカル「アウトサイダー」も12ノミネートされた。今年は著名人が関わるミュージカルがしのぎを削っている。(飯塚友子)