氷上を走る世界最先端のカーレース!EVの楽しみを広げるこれからのモータースポーツの在り方
巧みにインサイドからほかのカートを抜き去り勝利を手にする人、カーブでの位置取りで激しくバトルする人、初めて乗るカートのクセをつかみきれずスピンに泣く人……と、ドライバー一人ひとりにドラマが感じられ、そのたびに会場からは歓声やどよめき、拍手が起こる。 思いどおりの走行に満足し、笑顔でリンクを後にするドライバーもいれば、一瞬の判断の違いで勝利を逃したドライバーもいたが、すべてのレースが終了する頃には全員が満足そうな表情を浮かべており、「氷の上を走る」という体験そのものの特別感を伺わせた。
性差・年齢に関係なく楽しめるモータースポーツ
今大会にエントリーしたドライバーは性別や年齢層も幅広く、万人が楽しめるモータースポーツであることがわかる。とくに12歳の少年が「ビギナーズクラス」「エキスパートクラス」の両レースで優勝したのは、この競技における性差や年齢がハンデにならないことを象徴するかのようなできごとだった。 クラス別競技のトリを飾る「オーナーズクラス」は、車両オーナーの各チームが2名のドライバーを選出し、各レースの順位に応じて付与されるポイントの合計で優勝が決まる、これまで以上のガチンコレース。各自が乗り慣れたカートで競うため、手に汗にぎる熾烈なコース取りや、直線でアクセルを踏み切る迫力満点のスピード争いがそこかしこで見られた。
「オーナーズクラス」を制したのは、三井優介さんと及川紗利亜さんが乗車した「Team Pn LAB」。2度のレースの両方で1位でゴールし、文句なしの優勝を果たした。レース後に行われた抽選会では、一般観覧者も含めた試乗権、オリジナルグッズのひざ掛けやステッカーがプレゼントされ、終始和やかな雰囲気で抽選が行われた。 こうして大きな事故もなく無事すべてのプログラムが終わり、閉会式では今後の競技会の展望として、年少者の参加拡大、ドリフト競技の開催、自作マシンでの参加の呼びかけなど、さまざまなビジョンが語られた。とくに「美しく走る、楽しく走る」という言葉は、勝敗だけではないモータースポーツの魅力を端的に表しており、今後の「SDGs ERK on ICE」のさらなる発展を予感させた。 最後に、今後各地で開催されるようになるであろう氷上電気カート競技を見学してみたいという方にアドバイスを。当たり前だがスケート場は寒い。ダウンやベンチコートなど、厚手の防寒具をしっかりと準備して観覧に臨もう。甘く見積もってフリースのパーカーだけを準備して会場入りした筆者は、氷上の戦いを見守る一方で寒さとも戦う羽目になってしまった。皆さんにはぜひ、よりよい環境で新たなモータースポーツを楽しんでいただきたい。 アントレース=取材・文
OCEANS編集部