獅子島で発見したウミガメの化石。甲羅の長さは推定70cm。香川では推定200cm!そんな巨大ウミガメにも天敵が
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん 【写真】メソダーモケリスの復元造形(海洋堂の造形師・古田悟郎さん制作)
私は鹿児島県長島町獅子島で2020年に、約1億年前の白亜紀の地層から、ウミガメの化石を見つけました。甲羅の長さは推定約70センチ。「サツマムカシウミガメ」と名付けられました。 白亜紀には、巨大化の道を歩むウミガメが出てきます。今から約7千万年前、北アメリカ大陸にかつてあった内海に生息した「アルケロン」は、甲長2メートル20センチ、手脚を含めた全長は4メートルにも及ぶ、巨大な姿をしていました。 ただ、この巨体であっても、「海のティラノサウルス」とも呼ばれ、当時の海中では頂点捕食者である大型海生爬虫類・モササウルス類に襲われて、命を落とすこともあったようです。当時は現在のように世界中の海に生息する種類はおらず、各地の海域それぞれに多様なウミガメ類がいたらしいです。 日本国内では、北海道穂別地域や、四国から関西にかけて東西に分布する和泉層群から、「メソダーモケリス」というウミガメの仲間の化石が発見されています。現在のオサガメの先祖に当たります。
特筆すべき標本は、香川県に分布する和泉層群から発見された、メソダーモケリスの巨大な上腕骨です。復元すると2メートルに迫る甲長だったと推測されています。白亜紀の日本にも、アルケロンに匹敵する巨大ウミガメが、生息していたのです。 当時の日本近海は、アンモナイトなど多数の頭足類が生息する、豊かな海域でした。それらを餌としてウミガメも巨大化したのかもしれません。 しかし、和泉層群でも時代が新しい(約7千万年前)大阪側からは、メソダーモケリスの化石はほとんど見つかりません。天敵のモササウルス類が食べ尽くしてしまったのかもしれませんね。 【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)
南日本新聞 | 鹿児島
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