テロへのウクライナ関与ない、ロシア指導部内に異なる見解-関係者
(ブルームバーグ): 139人が殺害されたモスクワ郊外のコンサートホール襲撃事件で、プーチン大統領はウクライナが関与した可能性を主張し続けている。だが、大統領側近の中には異なる見解を持つ者もいる。
ロシア大統領府に近い4人の関係者は、ウクライナが関与した証拠はないと明言。ウクライナに関連はないと当局者が同意した協議にプーチン氏も出席していたが、同氏はこのテロ攻撃を利用して対ウクライナ戦争で市民を結束させようと引き続き決意していると、取り扱いに注意を要する問題だとして匿名を要請した関係者の1人が明らかにした。
関係者によると、ロシア大統領府当局者は22日のテロ攻撃を保安当局が防げなかったことに衝撃を受けている。この関係者が知る限り、ロシアの政治・経済エリートの間でテロ攻撃がウクライナの企てだと考えている者はほとんどいないという。
この事件はモスクワとその周辺で発生したテロとしては過去20年余りで最悪の規模となり、過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を発表した。プーチン氏はそれでも2回にわたってウクライナと関連付けようとした。
25日遅くにテレビ放送された安全保障責任者との会合では、イスラム過激派が実行したと認めつつ、「誰が指示したのかに関心がある」と発言。米国は「自国の情報機関のデータによれば、モスクワのテロ攻撃にウクライナの痕跡はないと考えられると、衛星国や他の国を納得させようとしている」と述べた。
プーチン氏の最側近らも、この説を持ち上げることに熱心だ。
パトルシェフ安全保障会議書記は26日、テロの責任があるのはISかウクライナかと問われ、「ウクライナに決まっているだろう」と記者団に語った。
ボルトニコフ連邦保安局(FSB)長官は同日、攻撃を実行したのはイスラム過激派だが、ウクライナと米英の情報機関が関与したと、証拠を示さずに主張した。
ロシア情報機関やFSBに詳しいアンドレイ・ソルダトフ氏は「情報機関はISの犯行だと理解しているが、プーチン氏の発言を受けて命令に従い、ウクライナまたは西側の関与があったと証明する以外に選択肢がなくなっている」と分析した。