今季、球団初のリーグ連覇を目指した阪神は2位でシーズンを終え、CSも敗退した。通算2度のリーグ優勝を果たし、昨季は1985年以来の日本一を達成した岡田彰布監督（66）も退任。その功績と課題を振り返りつつ、藤川球児新監督（44）への期待を展望する。（細田一歩）

岡田監督「当たり前のことを当たり前にするだけ」

攻守に隙のないチームを作り上げた岡田監督。教え子でもある藤川新監督に来季を託す

　岡田監督は2004～08年、23、24年の計7シーズンで阪神を率い、6シーズンでAクラス入り。通算勝率5割6分6厘の好成績を残した。この2年間もソフトバンクの162勝に次ぐ159勝を挙げている。

　「当たり前のことを当たり前にするだけ」という言葉を好み、打撃よりも計算できる投手力を重視。先発だけでなく、救援陣の整備に力を入れ、監督第1期は藤川を中心に、今季は桐敷や石井、ゲラ、岩崎らでブルペンを固めた。1985～2003年で、チーム防御率がリーグ1位だったのはわずか2度だが、岡田監督の7年間では4度。それ以外の3年も全て2位だ。

　攻撃では「ボール球を振って自滅している」と考え、昨季の就任後、四球を選ぶ意識を高めた。この2年間のチーム出塁率はいずれもリーグトップで、昨季はリーグ5位の84本塁打ながら、両リーグ最多の555得点をマークした。本塁打が出にくい甲子園で得点力を上げるためには、理にかなった戦法と言えた。

　一方で、主力との年齢差が以前より開き、意思疎通で苦労した感は否めない。選手と距離を置き、マスコミを通じて自身の考えを伝えるタイプだが、ある選手は「直接言ってくれないと、本当の思いは理解できない」と不満を漏らした。今シーズン終盤の勝負所で、監督と選手の思惑が一致せず、敗れた試合もあった。

藤川新監督「選手と関係を築ける自信ある」

　藤川新監督は現役時代にチームメートとしてプレーした選手が多く残り、気心が知れているのが強みだ。杉山健博オーナーは「選手との距離感を縮めて、レベルアップにつなげてほしい」と期待を寄せ、新監督自身も「うまくいかない時に（悩みなどを）言ってもらえる関係を築ける自信はある」と力を込める。

　この2年で、常勝チームとなるための土台ができたのは間違いない。恩師からバトンを受け取った藤川新監督は就任記者会見で、投手陣をベースにした岡田野球を継承する意向を示したが、そこにどんな色を加えていくのか。22日に始まる秋季練習がその第一歩となる。