啓新 初のセンバツ生き生き 自分で考え常に前向き /福井
<センバツ高校野球> 第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)は大会最終日の3日にあった決勝で東邦(愛知)が習志野(千葉)を降し、12日間の熱戦に幕を下ろした。初出場した甲子園で悲願の初勝利を挙げ、はつらつとしたプレーでスタンドを沸かせた啓新の戦いぶりを担当記者が振り返った。【塚本恒】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ◇1回戦 啓新 210001001=5 020000100=3 桐蔭学園 見れば応援したくなる、不思議な魅力を持ったチームだった。2012年の創部以来、球児の聖地に初めて足を踏み入れた選手たちだったが、浮足立つこともなく生き生きとプレーする姿が印象に残る。 1回戦の相手、桐蔭学園(神奈川)は昨秋の関東大会を強打で制した伝統校。それでもチームは、物おじしなかった。大会直前に大阪で練習に励んだ選手たちは、むしろ強豪と相対することを喜んでいるようだった。 試合前、先発した安積航大投手(3年)は「自分の力を信じ、楽しんで投げたい」とリラックスしていた。7回117球を投げて自責点2にまとめ、競った展開でも要所を締める投球が光った。 ◇2回戦 「格上によくできた」 智弁和歌山 100020200=5 000000002=2 啓新 続く2回戦も、強打の相手とまみえた。昨秋の公式戦チーム打率は3割8分3厘で、出場32校中2位の実力を誇った智弁和歌山(和歌山)。雨中の一戦となったこの試合、安積と浦松巧(3年)の両投手は計15安打を浴びたが、5失点にとどめる。ピンチで発揮した集中力と内外野の堅守が、見る側に勇気さえもたらしてくれた。 浦松投手は九回表、3者連続で三振を奪う気迫の投球を見せた。「打たれるのは仕方がない。大事なのは引きずらないこと」。前向きな姿勢は最後まで崩れなかった。 打撃陣は2度の併殺や盗塁失敗など走塁面で課題を残したが、九回裏には2点を返す意地も見せた。適時打を放った小野田渉冴選手(3年)は試合後に「変な言い方だけど気持ちよく負けた。格上相手に良いゲームができた」と晴れ晴れとした表情を浮かべていた。 すがすがしい言動はグラウンド外でも光った。2回戦では雨天中断の間にアルプススタンドで部員らが率先してごみ拾いをした。「自分に何ができるかを考えなさい」という植松照智監督の教えがチームに浸透していることをうかがわせた。 センバツを終え、春の県大会、そして甲子園行きの切符を争う夏もやってくる。啓新だけでなく、昨夏の福井大会を制した敦賀気比や昨秋の北信越大会に進んだ福井工大福井、今回のセンバツで21世紀枠の最終候補となった金津など注目校がそろう。観客をとりこにする好プレーがまた見られる。そんなことを期待してやまない。