大阪万博費用の全体像を初公表 「批判だけではなく、経済が循環する全体像を把握することが大事」佐々木俊尚が指摘
万博と組み合わせて人を地方に分散させることを考えてもいいのでは
飯田)この手の大規模イベントに関しては、「金も掛かるし、やめた方がいい」という声が最近多いですよね。 佐々木)1ヵ所にパビリオンを集め、そこに海外からも含めて人が集まるという万博の方式がいいのかどうかは、検討する必要があると思います。例えば1ヵ所に集めず地方に分散させるなど、いろいろな考えがあるでしょう。「オーバーツーリズム」などとよく言われますが、京都などに人がたくさん集まっている。 飯田)集中してしまっている。 佐々木)これを分散して、日本の知られざる田舎……私が家を借りている福井もそうですが、景色のいいパワースポットがたくさんあるのです。「こういうところに外国人が来ればいいのに」と思うのですよ。でも、現状では外国人は1人もいない。例えば、そういう場所に人を呼ぶ仕掛けと万博を組み合わせるような方法を考えてもいいのではないでしょうか。とは言え、国家財政を投入して万博を開くこと自体を否定するのは違う話なので、きちんとお金は使って欲しいと思いますね。
「空飛ぶクルマ」をなぜ批判するのか
飯田)予算が膨らんでいるのと、一義的には政府が行うという話ですが、大阪維新の会、あるいは大阪府市、経済界なども関わる話ですものね。 佐々木)万博で運行を予定している「空飛ぶクルマ」についても、東京新聞などが「ただのヘリコプターではないか」と噛みついています。見た目はただのヘリコプターかも知れませんが、「日本が率先して新しいテクノロジーを導入しようとしているのだから、見守ってあげましょうよ」と思うのですが、何か新しいことをやると「無駄金を使っている」と言って叩けば済むような感じになっている。本当に残念ですよね。 飯田)ヘリコプターとの大きな違いは、内燃機関ではなくモーターで動くところだそうです。いままでだと非力なモーターでは、ものを飛ばすことはできませんでした。 佐々木)ドローン技術の進展で、ここまでできるようになってきた。車の自動運転やドローン技術などさまざまな組み合わせで、ようやく21世紀の新しい乗り物として「空飛ぶ無人タクシー」の可能性が出てきているのです。そこを否定して、「東京新聞などはいったい世の中をどうしたいのか」と思ってしまいます。「みんながタンスにお金を貯め込んで地味に暮らす日本」を目指しているのかと。確かにあの世界の人たちは、すぐ「江戸時代に戻れ」と言いたがるところを見ると、実際に鎖国のようなことを望んでいるのかも知れませんが、若い人たちはたまったものではないですよね。 飯田)空飛ぶクルマや物流ドローンを開発している「SkyDrive(スカイドライブ)」という会社の開発現場を取材したことがありますが、航空法などの縛りもあるから、まずはネットで編んだ巨大なバスケットコートのような場所で浮かばせていました。「これは私有地だから大丈夫」というような体をつくらないと難しいと言っていました。イノベーションというのは、いろいろな縛りのなかでやらざるを得ないのですね。 佐々木)そうですよね。