2020年に義務化迫る“小学校プログラミング教育”、教育現場が抱える課題
プログラミング教育が目指すべき目的は何か
では、2020年のプログラミング教育義務化に向けて、教育現場にはどのような視点が求められるのでしょうか。兼宗教授は「プログラミング教育の目的を明確化することが重要」と語ります。そしてその目的というのは、「世の中の情報の仕組みを理解すること」と「プログラミングに触れる機会を提供することで子どもの可能性を広げること」の2つです。 現代社会において、日常の生活においても、また仕事においても、私たちはコンピュータなしで生きていくことはできません。誰もがパソコンやスマートフォンを活用し、また様々なシステムを活用した便利なサービスを利用して暮らしています。こうした高度情報化社会において、様々な物事を動かすコンピュータの基本的な仕組みを理解し、活用するためのリテラシーを備えることは不可欠だと言えるでしょう。 「プログラミング教育を通じて人とコンピュータの違いを理解して、コンピュータを動かすための指示を伝えるための論理的な説明を学び、“人がコンピュータの奴隷になるのではなく、私たちがコンピュータを働かせる”という体験をしてもらいたい。コンピュータの仕組みを理解すれば便利に使うことができるし、仕組みを理解すればこそモラルやセキュリティの意識も自分の中から芽生えてくるのではないか」(兼宗教授)。 加えて、システムエンジニアやプログラマーといったプログラミングを使った未来のものづくりに携わる仕事を目指すという可能性を子どもたちに提供することも、プログラミング教育の大きな目的だと兼宗教授は語ります。コンピュータが世の中を動かす現代社会において、コンピュータを使って新たな価値を生み出すエンジニアを創出することは、日本のみならず世界的に大きな課題だと言えます。初等教育の段階からコンピュータの仕組みに触れる機会を作り、子どもたちの好奇心を刺激することが重要なのです。 「国や社会にとってプログラミング教育の究極の目標は、グローバルに活躍するスーパーエンジニアの発掘・育成かもしれないが、エリートを生み出す教育は小学校の役割ではない。しかし、小学校のときからプログラミングに触れることで子どもたちの好奇心を養い、プログラミングをはじめとする情報技術に触れる人口の裾野を広げることは重要なのではないか」(兼宗教授)。