写真：HOMINIS

2021年1月クールに日本テレビ系にて放送され、本格ゾンビアクションとして注目された極限のゾンビサバイバルドラマ「君と世界が終わる日に」。放送後にも配信ドラマとしてSeason4まで制作され"きみセカ"の愛称で親しまれる本作は、2024年1月に最終章となる劇場版の公開を控えるなど、人気シリーズとなった。 【写真を見る】新シリーズも発表された「君と世界が終わる日に」 物語の幕開けとなるSeason1では、謎のウイルスの出現により終末世界と化した日本を舞台に、"生ける屍＝ゴーレム"と人間たちとの死闘、そして生存者である人間同士の争いが描かれる。 自動車整備士の響(竹内涼真)は、同棲中の恋人・来美(中条あやみ)へのプロポーズを控えていたある日、事故によってトンネルに閉じ込められてしまう。必死の思いで脱出したものの、彼を待ち受けていたのはゴーレムと呼ばれるゾンビが人間を襲い、人々が消え去った無惨な街の姿だった。逃げ惑う中である建物にたどり着いた響は、そこに取り残されていた生存者たちと出会う。愛する来美の無事を信じる響は彼女ともう一度会うため、生存者たちと共に決死のサバイバルに身を投じていく。 主役の響を演じる竹内涼真は、本作で日本テレビ系ドラマ初主演となった。2024年公開となる劇場版のポスタービジュアルでは何かを悟ったような悲壮な表情を浮かべているのに対し、Season1では持ち前の爽やかさとあどけなさが色濃く感じられる。自称「世界一諦めの悪い男」である響は、典型的な熱血漢とは異なるものの、絶望に満ちた状況でも人を信じ助けようとするアツい男。終末世界に残る最後の良心ともいえそうな彼が薄っぺらく見えないのは、間違いなく竹内の功績だろう。 しかしそんな彼も、生き残りを懸けたサバイバルを経るうちに否応なしに変化を強いられる。通りすがりの人も助けようとしていた響が、いつしか自分の身を守るために、ゴーレムに襲われる人間に背を向けるようになる。極限状態での選択を迫られ正義の指針が狂っていく中では、彼も完全に真っ白な人間ではいられない。善の砦である響も、ついには一線を越えてしまうのか――竹内の眼光に背筋がゾクリとするその瞬間は、ぜひ本編で確かめてもらいたい。 一方で中条あやみ演じる来美は、ただ待つのではなく行動するヒロインだ。響を探そうとする中で、医者の卵である彼女は治療の現場に駆り出されもする。ゴーレムとの死闘を繰り広げる響に比べれば安全な場所にいる来美だが、彼女は緊張の糸が張り詰めた心の闘いを強いられる場面が多い。そういった複雑な感情をにじませる一方、時には大胆な行動力と芯の強さを見せた中条は、もう一人の主役とも呼べるヒロイン像を作り出した。 終末世界でのサバイバルが展開する反面、Season1で時折挟まる響と来美の回想シーンと、毎話の終盤に流れる2人の過去パートは甘酸っぱい青春映画そのもの。そんな彼らの再会を祈りながら、次のエピソード、また次のエピソードと見続けたくなってしまう、罪な2人だ。 Season1から3年の時を経て最終章へと向かう本シリーズは、劇場版に加えてSeason5の制作も決定している。まだ"きみセカ"ワールドに触れたことのない人も、これを機に過去シーズンをイッキ見してみてはいかがだろうか。 文＝本永真里奈