角田裕毅「危険なドライビングでフェアじゃない」 捨て駒戦略で入賞したハースの言い分は?
「フラストレーションは感じます。でも......」 F1第2戦サウジアラビアGP決勝を終えたばかりの角田裕毅は、苛立ちとも落胆とも言える表情で言った。 【写真】「角田裕毅のRBカラーは?」F1参戦10チーム「2024年型」ニューマシン・フォトギャラリー ハースのケビン・マグヌッセンによる抑え込みと、ニコ・ヒュルケンベルグへのアシストによる10位入賞。マグヌッセンに抑え込まれてヒュルケンベルグに20秒の差を開けられ、その間にピットストップを完了されてしまった。レース序盤に中団トップの入賞圏内を走っていた角田とRBにしてみれば、ハースの戦略にまんまとやられたかたちだ。 「フェアじゃないと思いますけど、ルール上は問題ないのでどうこう言うことはできませんし、彼の立場に立てばチームとしてポイント獲得することをサポートしたいというのもわかりますし、ポジションを守るためになんでもしてやるという気持ちもわかります。ケビンはチームのためにうまくやったと言えるんじゃないかと思います。F1はチームスポーツですから」 抜けないセクター1でゆっくり走り、直線主体のセクター2とセクター3では全開で走って抜かれないようにする。直線番長マシンのハースだからこそできるドライビングで、マグヌッセンは巧みに後続を抑えた。このチームプレー自体は、角田が言うようにルールで禁止されているわけでもなく、合法的なものだ。 ただし問題は、マグヌッセンが1周目の幅寄せで10秒加算ペナルティを受けていたということで、実質的にポジションを争う立場にないマグヌッセンがこうした戦略に出たことに疑問の声が上がった。しかし、それもルールで禁止されているわけではない。 最大の問題は、マグヌッセンがコース外走行で抜いたということだろう。 17周目のターン4で、本来ならオーバーテイクできないこのコーナーのインに強引に飛び込み、止まりきれないレイトブレーキングだからこそ角田の前に出ることができた。
【ハース・小松礼雄チーム代表の説明は?】 ルール上は禁止されているこの行為に対して、10秒加算ペナルティが科された。これが角田と争っているドライバーならば取り返しのつかない痛手なのだから、ペナルティ回避のためにポジションを譲り返すところだ。 しかしマグヌッセンは、すでに1周目の10秒加算ペナルティを持っていた。だからハースは角田に譲り返すのではなく、さらに10秒加算ペナルティを受けることを覚悟のうえで、角田を抑え込む戦略に切り替えた。4.5秒前にチームメイトのヒュルケンベルグがいて、ピットストップまでにこのギャップを20秒まで広げる必要があったからだ。 ハースの小松礼雄チーム代表はこう説明する。 「あの時点で我々は角田と10位争いをしていたわけで、もちろん本来ならポジションを戻してもう一度、オーバーテイクをトライし直すべきだったと思いますし、ウチのペースを考えればそれも可能だったと思います。だからポジションを戻したとしても、狙っていたのは10位であることに変わりはなかったんですけど、そうしていたらどういう結果になっていたかはわかりません」 マグヌッセンを"捨て駒"にする戦略だが、ハースにとって最優先事項は「入賞」であり、そのためにはルールのなかで許されることはすべてやるという、F1では当たり前のことをやったまでだ。チーム代表が小松に代わって以来、ハースのなかでも徹底されてきた明確な目標というのが浸透しているからこそ、迷いなく提案されて実行に移された戦略だった。 「ケビンは20秒加算ペナルティを持っていたので、どうやっても入賞のチャンスはありませんでした。だから、ウチにとって唯一の入賞のチャンスはニコが10位に入ることで、彼が後方に十分なギャップを作ることができれば入賞できるということを計算して、それが唯一のチャンスだと考えたわけです。 そこからはケビンがとてもすばらしい仕事をしてくれました。チームからは1分36秒前後で走ってくれと伝えて、実際に彼は36秒2、36秒2、36秒2というペースを刻んで、一度はメインストレートで角田に抜かれて、僕も『まぁしょうがないか』と思ったんですけど、ターン1のアウト側からまた抜き返してくれて。ホントにいい仕事をしてくれたと思います」