「富士山噴火」が起こる日…「最悪の事態」を想定して見えてくること
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
富士山の火山灰対策が難しい理由
富士山が噴火した際、広範囲で被害を受ける火山灰対策は、自治体でも検討の緒に就いたばかりだ。最悪を想定した場合、どこまで何を準備すべきなのか検討の幅があまりにも広い。火口の位置や噴火時の天候、風速、風向き次第で、降灰の範囲や積る量が変化するからだ。 富士山の火山灰対策が極めて難しいのは、世界を見渡しても富士山ほど大量の火山灰が都市部に降ったという過去の事例がどこにも見当たらないためで、江戸に火山灰を降らせた300年前の富士山噴火に遡ることになる。 上下水道、電気、ガス、通信などインフラが全て繋がった現代と江戸時代とでは都市機能は大きな変化を遂げている。 1991年に20世紀最大と言われる大噴火を起こしたフィリピン共和国のピナツボ火山は、マニラ首都圏から約90キロの距離に位置し、マニラに甚大な被害が及ぶのではないかと懸念された。 しかし、噴火のタイミングで近づいた台風が風向きを変え、火山灰はマニラではなく、東南方向の米軍の基地に降り積もった。米軍基地は壊滅的な被害を受け、フィリピン政府の基地全閉鎖決定に繋がった。 この大噴火で放出された大量の火山灰は成層圏に達し、滞留した微粒子が世界中で太陽の日射量を減少させたほどだ。日本では戦後最悪の冷夏を引き起こし、コメ不足に陥ったことを記憶している人も多いだろう。 2010年にアイスランド共和国のエイヤフィヤトラヨークトル火山が噴火した際にも、噴煙が上空1万メートルにまで達し、火山灰がヨーロッパ北部と中部全域に流れ込み、ヨーロッパの航空路に大混乱を巻き起こした。欧州約30ヵ国で空港が閉鎖し、1週間で航空機10万便が運休、経済にも大きな影響を及ぼした。 国交省によると、火山が噴火し、吹き上がる火山灰にはガラス質の粒子が含まれている。これが、航空機のエンジン内に微量でも火山灰を吸い込めば、飛行中のエンジンの高温で溶けてエンジンに損傷を与えたり、最悪の場合、空中でエンジンが停止する恐れがあるのだ。