格調高い“東京の顔” 約20年の歳月、東京駅丸の内駅前広場がついに完成
“歩けるまちづくり”を重視
今般、主要ターミナル駅には“広場”と呼ばれるオープンスペースが設けられるようになっていますが、その多くは通路・街路の域を出ていません。そうした中、東京の顔でもある東京駅前に広場機能を有した“オープンスペース”が設けられることは、画期的だといえます。都都市整備局都市づくり政策部開発企画課の担当者は、こう話します。 「昨今は “歩けるまちづくり”が重視される潮流にあり、都でもそうした方針で街区・街路を整備するような流れになっています」 丸の内駅前広場の整備計画は1999年ごろより検討を開始しましたが、このときの議論でも歩車分離を進めることが話し合われました。 「また、駅前広場の計画も皇居につづく行幸通りが幅の広い道路で交通量が多いことから東京駅と行幸通りの結節点となる駅前広場は歩行者の往来がスムーズになるような工夫が求められました。そうした事情から、広大な“広場”を設けられることになったのです」
民間企業も協力、格調高い空間演出で信号機・標識の配置なども話し合い
丸の内駅前広場はJR東日本と都とが協力して計画や工事を進めましたが、丸の内エリアには三菱グループをはじめ多くの民間企業が本社や本店を構えています。今般、大規模な都市計画・都市開発に民間企業の協力は欠かせません。駅や駅前の整備は動線に大きな変化が生じるため、周辺の街区・道路にも大きな影響を及ぼします。 丸の内の整備計画に関して、2002年には行幸通りの景観を保全する検討委員会が立ち上げられ、2004年には東京駅丸の内口周辺のトータルデザイン検討委員会が発足しています。これらの検討委員会には、都・千代田区といった行政はもちろんのこと、土地所有者であるJR東日本、さらに“大手町”、“丸の内”、“有楽町”の企業・団体等で構成されている大丸有エリアマネジメント協議会などが参加し、幅広い観点から検討・整備を進めました。 こうした検討委員会では歩行者目線の動線を考えるといったこともさることながら、歴史的や景観や格調高い空間の演出といった観点からも整備計画を議論しました。東京駅から皇居に通じる行幸通りは、「ヴィスタ景」と呼ばれる両側に並木や建築物などが並んだ奥行きの深い眺めが特徴です。 「これらを際立たせるため、植栽や信号機・標識・照明といった工作物の配置・移設についても話し合いました。また、検討委員会は整備計画だけにとどまらず、現在でも不定期ながら開催されて、その都度、まちづくりの課題を話し合っています」(同)。 東京駅の丸の内側は、約20年もの歳月をかけて整備されました。こうした成果が実り、今年2月に開催された東京マラソンでは「首都・東京の顔に相応しい」という理由から、東京駅の行幸通りが新しいゴール地点に選ばれているのです。 間もなく、新しい東京の顔がお目見えします。 小川裕夫=フリーランスライター