子どもは「実の親」が育てなくてもいい…「虐待は普通の家庭で起きている」元児相職員ジャーナリストが訴える「子どものほんとうの幸せ」
暴力、ネグレクト、貧困――。さまざまな理由から自分で子育てができない親たちがいる。中にはその犠牲となり、命を落とすケースも少なくない。複雑な親子関係についてジャーナリストの草薙厚子さんに聞く。 【マンガ】「一緒にお風呂入ろ」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性の告白 前半記事『「虐待だとは思っていない」…子どもたちの心身に深い傷を与え続ける大人からの『しつけ』の正体」より続く。
養育環境によって子どもの将来は左右される
「子どもの健全な成長を考えたときに、『実の親』ではなくてもいいと思う時があります。子どもが健やかに成長できるかは、養育環境によって決まると考えられています。子どもの将来は環境によって大きく左右されるんですね」 そう話すのはジャーナリストの草薙厚子さん。少年鑑別所、児童相談所で職員として働き、多くの子どもたち、そして家族に関わってきた。 草薙さんは著書、『子どもを育てられない親たち』(イースト・プレス)の中で2017年に起きた「目黒女児虐待事件」、2018年の「千葉・野田小4女児虐待事件」など、記憶に残る凄惨な事件を振り返るとともに、草薙さんが児童相談所で対面してきた「子どもを育てられない親たち」の事例を紹介している。 貧困、若年層での出産、配偶者のほかに頼る人がいない育児環境。なかには出産後に夫から暴力を受けたり、モラハラ、不倫などで心身にダメージを負う母親や父親もいる。 「養育困難状態にあるものの、誰にも助けを求められない。余裕のなさから子どもにあたってしまう。金銭問題や浮気など、配偶者との間で生じた軋轢からのストレスを子どもにぶつけてしまうのです。虐待にまで発展するケースはなにも珍しいことではありません。そのため、養育環境の改善こそ着手すべき問題だと思います。 実の親が育てられないなら、里親や特別養子縁組という選択肢を考えてもいいと思います。ですが、日本の現状では、むしろとても困難なことなんです。家父長制度が根強く残る日本では『血のつながり』を何よりも重視し、両親や親族以外の大人が子供を育てることに難色を示す傾向が強いと思います」 子ども家庭庁によると、保護者のいない児童や家庭環境上養護を必要とされている児童は約4万2000人いるとされる。そのうち8割は乳児院や児童養護施設で生活しており、里親の元で暮らしている児童は6,080人。うち養子縁組里親は348人という(令和5年4月5日子ども家庭庁支援局家庭福祉課資料より) 対するアメリカは、日本と反対で、親元で生活できない約8割の子どもが里親制度や養子制度により、一般家庭で養育されているという。
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