運転のしやすさが光る ファミリーカーとして完璧な仕上がり! 日産 キックス試乗【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
■「半径5m以内の売り方」では限界がある
ツボをきっちり押さえたキックスはコメンテーター泣かせのクルマでもある。面白い発想が出てこないし、気の利いたコメントも出しにくい。「いいクルマです。以上」で話が終わってしまうのだ。 このままではページが埋まらない。文字と写真を大きくして「キックス最高!新型コロナに負けるな!」と編集してもらうしかない。このままでは私もお払い箱になってしまいかねないので、クリエイターらしくキックスをお題にいろいろと考えてみた。 気になったのは、キックスに限らず最近のSUVはみんな、こぢんまりとしたプロモーションで終わってないか?ということだ。 家族で楽しめるとか奥さんも運転しやすいとか、そこも大事なのはわかるが、それって半径5m以内の売り方だ。もっと視野を広げたほうがいいのではないか。 今、突然思いついたのだが、キックス24時間レースを開催してみてはどうだろう。 それもドライバーもチーム員も全員素人が望ましい。インターネットでライブ中継して「なんかキックスがやたら走っているぞ」と思ってもらえたらそれで成功。女の子だけのレースでもいいし、大学自動車部対抗レースでもいい。 『24時間テレビ』のマラソンは一流選手ではなく、スポーツの素人である芸能人が走っているから話題になるし、多くの人に観られるのだ。テクニックや速さはどうでもよくて、みんなヒューマンドラマが観たいのである。 キックスがいいクルマであることは実感できるのだが、実はクルマの出来はさほど重要ではなかったりする。 この手の建売住宅っぽいクルマ(←誉めてます)は性能よりも「どう話題を提供するか」が大切で、半径5mの売り方では限界がある。このあたりのことは日産だけでなく、クルマ業界全体が問題意識を持ったほうがいい。 キックスがあまりにもよくて、思いが膨らんでしまった。とても運転しやすい、いいクルマだったと最後にもう一度伝えておく。 (写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)