「死者34万人」の想定を大きく超える…南海トラフ地震と巨大台風の同時襲来がメガ津波を引き起こす
「経験したことのないような激しい横揺れでした。店は4階にあり建物も古い。ビルが倒れて圧死するか、厨房で出しているガスによる爆発で焼死するか、本気で死を覚悟しました」 【今から備えよ!】「スーパー南海地震」都府県ごと推定死者数ハザードマップ こう恐怖体験を振り返るのは、宮崎市の繁華街「ニシタチ」の居酒屋『一粒万倍』店長・日吉一生氏だ。 日本全国で大きな揺れが頻発している。8月に起きた主な地震は以下の通り。 ・8日、宮崎沖日向灘(ひゅうがなだ)で震度6弱、マグニチュード(M)7.1。 ・9日、神奈川県西部で震度5弱、M5.3。 ・15日、同地域で震度4、M4.4。 ◆南海トラフ地震は突然起こる 不気味なのは、いずれも国が想定した南海トラフ地震の想定震源近くで起きていることだ。宮崎沖の地震を受け、気象庁は初めて南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を発表。政府が今後30年以内に70~80%の確率で起きるとする、南海トラフ地震が「ついに来るのか」と列島に緊張が走った。 自然災害が専門の、関西大学特別任命教授の河田惠昭氏が語る。 「南海トラフ地震は突然起こります。臨時情報が出たことで、これまで無関心だった国民も、いずれ巨大地震が起きることに気づいたはずです。事前の準備を何もしないというのは間違っています」 気になる現象がある。京都大学防災研究所宮崎観測所によると8日の地震以降、宮崎沖で断層がゆっくり滑る「スロー地震」が頻発しているという。’11年3月に起きた東日本大震災直前にもスロー地震が多発。M9、最大震度7の超巨大地震を誘発したことがわかっている。「巨大地震注意」は8月15日をもって終了したが、南海トラフ地震の脅威はむしろ高まっているのだ――。 宮崎沖でスロー地震が続発した同時期、別の災害が日本を襲った。中心気圧950ヘクトパスカル、最大瞬間風速60m/Sという非常に強い台風7号が接近。東海道新幹線が運休するなどの影響が出た。気象予報士の村山貢司氏が解説する。 「ここ数年の日本近海の海水温は、’91年から30年間の平均を3℃~4℃上回っています。伊豆半島沖では30℃ほどにもなる。台風の発生条件の一つに、27℃前後の海水温があります。以前は温かいフィリピン海付近で発生していた勢力の強い台風が、現在は日本近海で起きるのが当たり前になっているんです」 ◆10月まで続く 日本でも頻発しそうな巨大台風は、南海トラフ地震と無関係ではない。23万人ほどが犠牲になると予測される津波の猛威を高めそうなのだ。村山氏が続ける。 「台風の中心気圧が1ヘクトパスカル下がると、海面が1㎝高くなるといわれます。比較的弱い1000ヘクトパスカルの台風に比べると、今回の7号(同950)では海面が50㎝高くなることになる。強力な台風によって、津波の被害がより甚大になることが想定されるんです」 政府の中央防災会議は東日本大震災を受け、’12年8月に南海トラフ地震の想定震源域を拡大。最悪の場合、死者は32万人以上にのぼるとした。しかし最大34mにもなるとされる津波は、巨大台風と発生時期が重なればさらに高さを増すのだ。メガ津波となり、被害はより大きくなる危険性がある。前出の河田氏が語る。 「地震にとって最も怖い他の災害が、豪雨をともない土砂災害を起こす台風です。’04年10月の新潟県中越地震では直前に通過した台風23号により、中山間部の約4000ヵ所で土砂災害が起きました」 ダブル災害の襲来危機は、巨大台風が発生する10月まで続く。 『FRIDAY』2024年9月6・13日合併号より
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