「物価高で生活苦しい。私たちは何を食べれば…」支えるのは今や年金暮らしの高齢者 「見えない貧困」と向き合う支援団体
長野県の支援団体「SOSネットワークすわ」活動15年、市町村の枠組み越え活動
長野県諏訪郡下諏訪町を拠点に活動する生活困窮者の支援団体「SOSネットワークすわ」が発足15年を迎えた。2008年のリーマン・ショックをきっかけに09年に諏訪共立病院(下諏訪町)や福祉団体など6団体で発足。「地域のセーフティーネット」として、市町村の枠組みを超え、食料配布や生活相談といった支援に取り組んできた。一方、支援が届かない「見えない貧困」があるとみており、新たな掘り起こしが課題になっている。(川上詩織) 【写真】相談会の会場
発足のきっかけはリーマン・ショックで起きた外国人労働者の派遣切り
支援団体はリーマン・ショックの影響で派遣切りが相次ぎ、特にブラジル国籍の失業者が増えたことから、09年2月に発足した。月2回、下諏訪町の矢木町会館で相談会を開き、食料物資を配布し、生活や医療などに関する相談に乗っている。
相談会では食料を配布し悩みや困り事を記録
3月中旬の相談会は、約30分前に看護師や医療相談員らが集まり、缶詰や茅野市産の米などをポリ袋に詰めた。訪問者が来ると、体温や血圧を測定。「心配なことはありますか」「お体にお変わりないですか」と尋ね、健康面の悩みや日常生活で困っていることなどを聞いて記録し、食料の入った袋を手渡した。
「声なき声をすくい上げたい」
相談会に訪れた下諏訪町の60代の女性は「物価や光熱費が高騰し、生活が苦しい。私たちは何を食べればいいのかと感じる」と訴えた。相談者の生活が苦しい場合は生活保護申請などの行政手続きを手伝い、医療的な支援が必要な場合は病院の医師につないでいるという。 発足時から相談業務に携わる諏訪共立病院の医療相談員三本舞さん(37)は「貧困は見えづらい。生活の様子などを細かく聞き、発した言葉などから変化に気づき、声なき声をすくい上げられるようにしていきたい」と話す。
困窮者の掘り起こしを検討へ
発足当初の支援対象は、派遣切りに遭うなどした外国籍の労働者が多かったが、現在は年金暮らしの60~80代の住民が中心になった。相談会に訪れる人は毎回10人前後。ネットワークすわは物価高騰などの影響で相談会などに来ない潜在的な困窮者への支援がいるとしており、掘り起こしを検討するという。 ネットワークすわによると、貧困状態が続くと買い物や趣味などで外出する機会が減り、自宅に閉じこもりがちになる。そうした人たちとつながる活動の一つが参加者やスタッフが作った食事を食べながら語り合う「わいわい亭」。近年は新型コロナウイルスの影響で実施できなかったが、近く再開する。 現在は下諏訪町の矢木町会館での相談会が活動の中心。支援の取り組みを広げようと「出張型」のサービス実施も視野に入れている。ネットワークすわの事務局長上原和喜さん(85)=茅野市玉川=は「少しでも必要としている人たちに支援を広げたい。相談会の存在を知ってほしい」と話している。
相談会は原則、毎月第2、4月曜日(開催日が祝日などに重なった場合は前週や翌週)の午後1時半~2時半、事前の予約は必要ない。食料や衣服などの寄付を受け付けている。問い合わせは諏訪共立病院内の事務局(電話0266・28・2012)へ。