アメリカが「ほぼトラ」になりそうな重大理由~バイデンを苛む「反トランプ」の寛容政策と不法移民急増・治安悪化のジレンマ
バイデンはあまりに性急に国境を開いてしまった?
バイデン政権は、トランプ政権との差を強調するために、あまりに性急に国境を開いてしまったとしか考えようがない。そして、「国境まで辿りつけば、何とかなる」という過剰な期待を、世界の人々に与えてしまったのではないだろうか? アメリカ人の選挙民には、「トランプの排他政策には反対だ。しかし、不法移民が引き起こした治安悪化も受け入れることもできない」と考えている人が多いはずだ。 そうした人々は、大統領選でどのように投票すれば良いのだろうか? これに対する明確な答えを、民主党側は用意しなければならない。しかし、これは極めて難しい問題だ。 それに対して、「全面的に禁止」というトランプの政策は、シンプルであるために、極めて分かりやすい。それをどう評価するかは別として、それがどのような政策であるかは、誰にもすぐに分かる。 それに対して、「トランプが作った壁が高すぎる」とし、「それをどこまで下げればよいのか?」という問題は、簡単に答えが見い出せるものではない。答えが出せたとしても、それを理解してもらうことは、容易でない。 全面的に禁止するわけではないが、かといって、無制限に自由にするわけでもない。その中間のどこかを選び、なぜそれが最適なのかを人々に納得させなければならない。民主党は、こうした困難な課題に直面している。
野口 悠紀雄(一橋大学名誉教授)