新型BMW M850i xDriveクーペは夢のある1台だ!!! もやは絶滅危惧種の高級2ドアクーペの魅力を考える
これこそ高級車
多気筒エンジンの大トルクを活かした乗り味は、ピュアスポーツカーではないものの、じつに気持ちがいい。その印象は、初代と似ている(初代はいま運転すると軽快なハンドリングに驚く)。 モニター画面を使って設定するドライブモードはやや複雑で、“ちょい乗り”だと習得するのに時間がかかるけれど、これもオーナーの楽しみ。もちろん、ノーマルモードでもエコモードでも、十分、トルクたっぷりの走りを堪能できる。 4394ccV型8気筒エンジンは、390kW(530ps)の最高出力と750Nmの最大トルクを発生するので、かったるさを感じる領域はない。同時に、反応がよいステアリングをそなえるので、余裕あるボディサイズに関わらず、操縦を楽しめる。 たっぷりしたトルク感と、気持ちよく車体を操作できる感覚のステアリング。この2つが、M850i xDriveクーペを大いに魅力的なクルマに仕立ててくれている。 内装の特別感も、特筆点。今回の車両には「BMWインディビデュアル」というオプションが装備されていて、シート表皮は2トーン。「アイボリーホワイト」と茶色の「タルトゥーフォ」の組み合わせだ。タルトゥーフォというと、北イタリアで採れる白トリュフのイタリア語だけれど、もうひとつ、「タルトゥーフォ ディ ピッツォ」なる有名なイタリアのチョコレート菓子がある。そっちのイメージかも。ツヤ感もおみごと。 この色のコンビネーションは、スポーティなスウェードのジャケットを連想させて、たいへん好ましい。このクルマのイメージによく合っている。メルセデス・ベンツほどやりすぎ感はなくて、適度な品のよさがいまのBMWの真骨頂だ。 高級だなあと感心するのは、上記のタルトゥーフォカラーがボンネットオープナーにまで使われていること。小さな合成樹脂のパーツまでカラーキー(色の統一)されている。これこそ高級車だ。 精度が向上したという会話型音声入力システムをはじめ、ハンズフリー運転支援システムや、現行「3シリーズ」から搭載されたパーキングアシスト(直近50mを車両が記憶していて同じラインを使って自動で後退してくれるシステム)などは、いち早くデジタライゼーションとコネクティビティの装備に注目して開発に着手してきたBMWならではのもの。 このクルマを手に入れたら、遠出がしたくなるのは請け合う。遠出が好きなひとが食指を動かすモデルということも出来る。夢のある高級2ドアクーペだ。
文・小川フミオ 写真・田村翔 編集・稲垣邦康(GQ)