純烈・酒井一圭が語る「戦隊シリーズ」オーディション秘話 「2年連続、最終で落選」からのガオレンジャー出演
『タイムレンジャー』オーディションを受けなかった理由
──ちなみに、『ゴーゴーファイブ』と『ガオレンジャー』の間に『未来戦隊タイムレンジャー』(2000年)がありますが、そのオーディションは受けなかったのですか? 酒井 2年連続最終決戦で落ちて、「もういい加減にせえ。受けへん」とひねくれていたんです。「電車賃もかかるのにお金くれへんし」とね。今はわかりませんが、当時はオーディションの経費は出なかったんです。翌年の『ガオレンジャー』のときは、「戦隊のオーディションがあるけど、もう行かないよね?」と事務所の人に言われて。 ──なんと答えたのですか? 酒井 俺、そのとき、競馬で借金が膨らんでいたんですよ(笑)。だから「今回こそ、役を獲りにいく」と堅く決意しまして、「行く!」と答えました。 ──借金苦からの3度目の挑戦でしたか……。 酒井 そのときも、最終決戦までいけました。当時のプロフィール写真は長髪だったんですけど、実際はソフトモヒカンにしていたんですよ。だから、「あれ、キミ髪切った?」と聞かれて。「そうなんですよ。一昨日、切ってもうて」、「OK、わかった」と、俺のプロフィール書類が審査員のテーブルの端に置かれたんです。その時点で「イエロー確定や」と思って。 ──レッドでないのはわかりますが、なぜイエローだと思ったのですか? 酒井 それがね、イケメンが集っている部屋、女子の部屋があるなかで、俺が入るようにいわれた部屋には、ぽっちゃり体型の人ばっかりやったんですよ(笑)。 ──『鳥人戦隊ジェットマン』(1991年)のイエローオウル以来の、ぽっちゃりキャラ復活の可能性があったのですね。いわれてみれば、ガオブラック・牛込草太郎は元力士設定ですね。 酒井 実際に力士経験者もオーディションにはおって、首脳陣はその人を選ぶつもりやったと思います。で、まずは、第1話の台本をやるんですね。俺がトップバッターだったので、「他の連中を震え上がらせたろ」と思って、バ~ンとセリフを決めました。そしたら、次の力士経験者の芝居がボロボロになってしまいました。結局、女子部屋と俺の部屋だけは1人に絞られて、他の候補者は帰されたんです。 ──ガオホワイト役の竹内実生さんもそこで残されたんですね。 酒井 5人並んで立つときに両脇のふたり(ガオブラック、ガオホワイト)は固定なんですよ。ほんで、審査をしながら間の3人はどんどん入れ替わっていき、そこに金子昇、玉山鉄二、堀江慶もいて。「これで落とされたら、マジで落ち込むやろな」ってくらい、俺は何時間も同じ位置に立たされていました。 正式に合格の連絡があったのは翌日で、イエローだと思い込んでいたのですが、「ブラック」って書いてあって、「えっ、ブラックってクールキャラちゃうの?」みたいな。だけど、「体がデカくて気はやさしくて力持ち」みたいに説明が書いてあったんで、納得しました。結局、元力士の要素は残ったんですが。 ──3度目の挑戦での合格は、どんな点が評価されたからだと思いますか? 酒井 首脳陣は『ギンガマン』オーディションのころから見ているから、俺の力量は分かっていたんですよ。あとで、ある方に「なんで今回は俺を受からせたんですか? 逆になんで今まで俺を落としていたんですか?」って質問しました。 そしたら、「物の大きさをわかりやすく示すとき、隣にタバコの箱を置くだろ。お前はそれだ」と。「つまり、お前がいると誰がうまくて、誰が下手か、誰がきちんと対応できるかよくわかる」ということでした。 「そんなら俺にギャラ払えや!」って思いましたけどね(笑)。「『ガオレンジャー』のときはタバコの箱が本気出しただろ。だから、お前が勝ったんだ」とも言われました。「ああ、ありがたいなあ」と。借金があったから、必死だったんですよね。だから、『ガオレンジャー』のメンバーに言われるんですよ、「全51話あるけど、酒井の芝居が一番すごかったのは、あの最終オーディションだった」と(笑)。
ミゾロギ・ダイスケ