急速に増加するセルフレジ、「省人化」を競う小売業が決して忘れてはいけない視点
● 人手不足などを背景に増加する コンビニ・スーパーでのセルフレジ 昨今、コンビニやスーパーでセルフレジが急速に増加している。背景には小売業界を取り巻く深刻な人手不足や企業側のコスト削減ニーズがある。小売企業やリテールソリューションを開発する企業は、セルフレジも含めより少ない人員で店舗オペレーションを遂行する省人化に向けた様々な取り組みを推進している。 コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパンは、2025年までにセルフレジの全国展開を目指している。スーパー大手のイオングループは、店舗に設置されたスマホや客自身のスマホにアプリをダウンロードすることでセルフスキャンが可能なソリューションである「レジゴー」を展開している。また同グループはグループ企業のマルエツにおいて「Scan&Go」を展開している。 ● 解決すべき課題が 山積するセルフレジ 企業側が積極的にセルフレジを推進するに当たり、万引きなどの不正利用の防止は大きな課題である。また利用者の視点からも解決すべき課題は山積だ。 現在のセルフレジは、利用者にとって煩わしさが残る設計であるため、有人レジが選択されたり、せっかく利用されてもクレームが寄せられることがある。 例えばセルフ決済時には、レジ袋の要不要、ポイントカードの保有の有無、決済手段など、商品の購入が完了するまでに数多の選択画面があり、煩雑だという声が残る。また、商品コードをスキャンする機器がハンディスキャナのみのセルフレジも存在し、操作に両手を使う必要がある。 結果として、セルフレジを利用しているのにもかかわらず、最後には売場スタッフが呼ばれ、対人での対応が発生するケースが後を絶たない。
他国では2017年頃から米国や中国で無人コンビニが大きな話題を集めた。しかし現在では当時の勢いはなく、閉店した店舗も多い。筆者もかつて上海を訪れて無人コンビニを利用したが、アプリ認証での入店や、決済時の操作には煩わしさがあり、店員が対応してくれる店舗と比較して、メリットを感じることはできなかった。 ● 利用者の満足度を高める 新しい試み 小売業におけるセルフレジの多くは、顧客に店側の作業を肩代わりしてもらう設計が主流だ。このため、利用者サイドに何らかの負担を強いることを完全に回避することが難しい。 しかしサービス設計の簡素化や戦略的な投資戦略によって、利用者の満足度を高める道はある。 例えば、大手リテールソリューション機器メーカーが開店した次世代型の実験店舗では、決済手段の選択肢をプリペイドカード、現金、顔認証にあえて絞り込む事例が存在する。 日本は中国などと比べて電子決済の規格が乱立している。利用できる決済手段が絞り込まれていれば、操作画面がシンプルとなり、操作方法が分からずに店員が呼びだされる場面も減る。上記の実験店舗は、売場オペレーションを1名のスタッフで対応できているようだ。 企業側が電子タグや次世代カートに積極的な投資を行うことで、省人化決済の利用者への追加負担を極小化する取り組みにも注目したい。