【能登半島地震】家屋の補強推進を(1月25日)
能登半島地震の死者は24日現在、233人に上り、家屋倒壊で亡くなった人が約9割を占めている。倒壊を免れた建物については、立ち入り禁止の応急判定が4割近くに達する。今回の直下型地震を教訓に、家屋の耐震補強の重要性を改めて認識したい。 家屋被害の甚大さが能登半島地震の大きな特徴と言える。能登半島では2020(令和2)年以降、群発地震が続き、昨年5月には最大震度6強を観測した。ここ数年間に大きな揺れが重なり、家屋の耐震性が低下していたと指摘されている。 耐震基準改定前に建てられた耐震性の低い木造家屋は、高齢者が所有していたり、居住したりしている例が少なくない。死者が多い輪島、珠洲両市の高齢化率は4割を超えている。強い地震に耐え得る改修をしていれば、救えた命があったと思うと切ない。 東日本大震災が発生して以来、本県では震度6強の地震が2021年2月から翌年3月までに2回起きている。これらの揺れに耐えられたからと安心せず、むしろ耐震性が低下しているといった意識を持つべきだろう。
高齢化率については、県内の複数町村で4割を超えている。6割超の町もある。総務省の2018(平成30)年の統計調査では、県内の住宅約73万1100戸のうち、9万4600戸の耐震化が不十分との結果が出ている。能登半島地震と同様に建物倒壊が相次いだ阪神大震災、発生から間もなく13年となる東日本大震災の経験を踏まえ、耐震改修の必要性を広く周知するよう求めたい。 国、県、市町村は耐震基準改定前に建てられた木造家屋の耐震診断や改修に対し、税の優遇や費用の一部負担などの補助制度を設けている。能登半島地震発生後、福島市では市民の問い合わせが増えているものの、既定の予算は既に消化された。各市町村は、能登半島地震をきっかけに耐震診断や改修を考える住民が増える点も想定して新年度の予算を検討してほしい。 政府の地震調査委員会は今月、宮城県沖地震の30年以内の発生確率を「70~80%」から「70~90%」に引き上げた。備えの重要性を肝に銘じ、でき得る対策に早期に取り組む防災、減災意識も高める必要がある。(神野誠)