高齢者による交通事故 免許を返納すれば済む問題なのか
2016年は「高齢者による交通事故」が大きく報じられ、社会問題化した感もあります。高齢者が運転する車がコンビニや病院に突っ込む事故のニュースをテレビや新聞で見た人も多いでしょう。もしかしたら「高齢者は運転しない方がいい」とか「免許を返納するべきだ」と感じている方もいるかもしれません。ですが、高齢者による交通事故は本当に増えているのでしょうか。結論から言うと、実際には増えているどころか減少傾向にあります。高齢者事故の課題はどこにあるのでしょうか。
事故件数が一番多いのは10代
グラフは、交通事故における第一当事者(事故を起こした人の中で最も責任が重い人)を年代別に分けて、さらに年代ごとの免許保有者10万人あたりでどれくらい交通事故を起こしているのかを図にしたものです。つまり、その年代の人たちの「交通事故の起こしやすさ」を表しています。
これを見ると、10代(16歳から19歳)が一番交通事故を起こしやすく、続いて20代が事故を起こしやすいことがわかります。高齢者はその次であり、この状況は10年前から続いていることがわかり、近年になって高齢者による事故が急に増えているわけではありません。 この傾向は死亡事故に限った場合でも同じです。死亡事故の起こしやすさについても警察庁にデータがあり、ここ10年間では10代と80代以上が他の年代よりも死亡事故を起こしやすいことが分かります。しかし、これも10年前から同じような傾向が続いており、高齢者だからと言って死亡事故を起こしやすいわけでもないようです。 テレビなどの報道で、高齢者による交通事故が増えているように感じてしまいますが、データを見てみると、実はそうではないことが分かると思います。 しかし、今後、高齢者の人数自体は増えていくため、何かしらの対策は必要でしょう。 今回は交通事故の統計的なデータをもとにしつつ、高齢者による事故の本当の課題について考えてみたいと思います。