飛鳥クルーズ、その船旅の魅力|篠田哲郎×小山薫堂スペシャル対談(前編)
旅は予期しないことが起こり、縁につながる
小山:やはり初めて行く土地ってどこが美味しいか、わからないじゃないですか。昨年、イタリアで開催された「ウーディネ極東映画祭」で映画『湯道』(小山薫堂脚本)を出品したとき、サインをもらいに来たイタリア人と仲良くなったんです。その彼がトリエステ在住なので、先日のクルーズでトリエステに寄港すると知ったとき、すぐに連絡して「美味しいレストランに連れていってほしい」と頼んだんですよ。 篠田:それは素敵ですね。 小山:観光客が誰もいなくて、地元に愛されている本当にいい店で、こういう店をクルーズ船が紹介してくれたら最高だなと思いました。あと、サインがたくさん壁にかかっていたのですが、ひとつだけ日本語で。書かれた名前を検索したらコントラバス奏者だとわかり、思わずメッセンジャー経由で「突然すみません。あなたがサインを残したトリエステのこのお店で食事をしていますが、ここめちゃめちゃ美味しいですね」とメッセージをしてしまって(笑)。やり取りして、彼の帰国の際に会う約束をしました。旅ってそういう予期しないことが起こるし、それが縁につながり、自分の未来に影響を及ぼすものなんじゃないかな。 篠田:まさに。薫堂さんが「『飛鳥II』はいろんなものを引き寄せる磁場である」とおっしゃってくださいましたが、あらためてそういう場を目指したいです。 ■今月の一皿 北海道の名産「どろぶた」と天草牛のマルカワとロースで再現した「飛鳥クルーズオリジナルドライカレー」。 ■blank 都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。 篠田哲郎◎1968年、京都府出身。92年、日本興業銀行に入行。97年から海運業界を担当。2007年、初の船舶投資ファンドを設立し、共同創業者を継ぎ2019年から現職。同年「飛鳥」による地域創生を主眼に郵船クルーズに資本参加、代表取締役を兼務。 小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務める。
小山 薫堂